Cachéベースのオーダリングシステムで現場の業務に適したIT化を推進

北中城若松病院は、2004年11月に新設された情報企画室が中心となって院内のIT化に取り組んできた。設立直後にオーダリングシステムの導入を検討したものの、当時は急性期病院を想定したシステムが多く、コスト面でも機能面でも当院のニーズに合わず導入を見送った。その後、2006年4月に情報企画室の人員が増員されたことで本格的な導入に向けた検討が始まり、2007年7月にデータキューブのオーダリングシステムの採用を決定した。

家族も支える為の高齢者医療を目指す北中城若松病院の取り組み

涌波 淳子氏
特定医療法人アガペ会理事長 北中城若松病院 院長 涌波 淳子氏

 特定医療法人アガペ会は、人口約1万6000人の沖縄県北中城村で亜急性期以降の医療・介護サービスを幅広く提供している。同会の理事長で北中城若松病院の院長でもある涌波淳子氏は、義母の入院時に自らが感じたもどかしさや疑問から、家族も支える為の高齢者医療の実践に取り組んできた。

 「当院は、1987年にわずか27名の職員でスタートしました。当時は認知症のお年寄りも統合失調症の若い方もともに、急性期の精神病院の中に閉じ込められていたりしたのです。当院は、『老いていく人たちに共感し、身体と共に心も支えていける病院』となることを目標に設立されました。現在は在宅を支援する事業所も含め、法人全体で約500名の職員に支えられています。各病棟の入院患者の平均年齢は80歳前後。在宅支援を含め20年近く支えてきた患者様もいらっしゃいます。」と涌波氏は話す。

 北中城若松病院は、一般病棟のほか、介護認知症疾患療養病棟、特殊疾患病棟、回復期リハビリ病棟など、療養者の特性に合わせた5つの病棟を備えている。急性期病院が在院日数の短縮化を進めるなかで、慢性期医療を担う病院への期待が高まり、療養者の医療依存度は重度化していった。それに伴い、今まで以上の質の向上と効率化が求められるようになった。

 「濃厚な慢性期医療を必要とされるお年寄りの数が増えても、増やせる職員数は限られています。そうした状況において、ご家族の期待に応えて効率的で質の良い医療を行うだけでなく、そのための経営を成り立たせる必要がありました。診療報酬の制度が改訂されていくなか、当院では病院経営を担っていける人材が必要であると考え、2002年に事務課長を採用しました。それが、当院のIT化に向けた取り組みの第一歩だったと思います」と涌波氏はIT化を推進した契機を振り返る。

当院に合ったオーダリングシステムを模索

大山 朝彦氏
特定医療法人アガペ会北中城若松病院 法人本部事務局 兼病院事務課長 大山 朝彦氏

 2004年11月、院内のITシステムを総合的に運用企画するための部門として、情報企画室が設けられた。

 「私が当院に赴任したのは、介護保険がスタートして2年目の頃です。すでに院内にはLANが整備され、多くのパソコンが稼動していましたが、その多くが部署のみでそれぞれに稼動していて、病院経営に必要な情報を一括して集めるのは困難な状況でした。そこで、急性期病院で利用している電子カルテやオーダリングシステムを導入できないか検討を始めました」と担当課長である大山氏は導入の取り組みについて語る。

 当時から患者の重症化によって医療現場は多忙であり、処方箋のやり取りなどの安全性を確保するためにも、IT化による効率性の改善とチェック機能の強化は必須の課題となっていた。さらに、医事システムのデータを事務の部門で利用できれば、病院経営にも貢献できると大山氏は考えていた。しかし、2004年の段階では、本格的なシステムの導入は見送られる。その理由について大山氏は、当時のシステム導入にかかるコストと性能のバランスの問題を指摘する。

 「2004年にオーダリングシステムの導入を見送った理由は、ソフトウェアだけで1億円を超える高額なシステムだったことや、急性期病院向けのシステムでは、当院にはオーバースペックで無駄が多かったためです」

 その後しばらくは、2005年4月の個人情報保護法の施行に合わせてパソコンやソフトウェアにパスワードを設定したり、サーバルームを中心とした中央管理を開始するなど、一歩ずつ着実にIT化を推進していった。

 「私たちは、ITをあくまでも現場と経営をつなぐツールだと考えていました。ですから、高額で多機能なパッケージ製品ではなく、私たちに合ったオーダリングシステムを求めたのです」(大山氏)。

システム選定後は各部署間の調整と運用の変更を徹底的に検証

仲座 美貴子氏
特定医療法人アガペ会北中城若松病院 情報企画室係長 仲座 美貴子氏

 そうした検討を進めていた2006年4月、オーダリングシステムの導入経験のある仲座美貴子氏が情報企画室に入職した。それによって、北中城若松病院のIT化は大きく前進したという。オーダリングシステムの導入を考慮して院内外のネットワーク環境を整備し、翌2007年5月から本格的な再検討をスタートさせた。

 「導入に際して私たちが掲げた3つの目標は、安全性の重視、業務の効率化、情報の共有化です。そして、それを共に実現してくれるパートナーの条件として、当時利用していた医事システムとの接続実績があり、県内に拠点を置く開発企業やメーカーで、費用対効果に優れた製品を手がけていることを重視しました。その結果、データキューブのオーダリングシステムの導入を決定し、システム構築と開発は地元での長い実績を持つオーシーシーに依頼することにしたのです」と仲座氏は選定の理由を語る。

 オーダリングシステムの導入決定後、情報企画室では、2007年9月から12月まで、外来、入退院、処方、検査、看護支援・注射、食事・画像という6つのワーキンググループを設け、週2回の会合で、各部署間を調整しながら、できるだけシンプルな運用を検討していった。ワーキンググループには、医師や看護師だけでなく、各コメディカルや医事課、情報企画室のメンバーが参加して、積極的な議論を行ってきたという。

 「システムの導入が成功した要因は、最初に最小限のオーダリング機能を導入し、現場の職員が慣れた頃に次に必要な機能を増やしていくという計画に対して、院内のスタッフと開発企業が一致して取り組んだからだと思います。当院は、IT化において先進的な病院ではありません。急性期病院のようなフル装備もなく、高機能な機器を揃えているわけでもありません。そのぶん、システムの導入にあたっては、必要なものはできるだけコストをかけず準備し、足りない部分は自分達の工夫で上手にシステムを活用している病院だと思っています」と仲座氏は同院の取り組みとその成果を評価する。

慢性期医療での安全性と効率性をめざして

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経過表の上手な活用によって情報共有ができるようになり、「それぞれの部署が診療に参画する意識の向上(チーム医療の活性化)につながっている」という。

 2008年3月にオーダリングシステムが本稼動すると、情報企画室では新たな追加システムの検討に乗り出した。例えば、通常の食事オーダでは1日3食の経口からの摂取が基本となっているが、経管からの食事を摂取する場合には、1日6回の食事となることもある。その経管食オーダが現場スタッフにうまく伝わるように、画面では経管食6回分の指示が簡単に入力できるよう表形式にして、現場でも分かりやすいように、食事伝票にも反映できる形へと変更した。

 各種の追加システムの中でも特に安全性を追求したのが、注射オーダの実施確認だった。通常は、医師と看護師の相互信頼と多忙性の中で見過ごされがちな注射オーダの実施確認だが、このシステムでは簡便なチェック機能を追加。医師が注射や処方オーダを入力すると看護師は実施し、実施入力を行い、その実施を医師が確認するというワークフローが設計されたのである。

 「機械や人にお金をかければそのコストが戻ってくる急性期病院とは異なり、マルメ(定額制の請求)の入院医療中心の慢性期病院では、コストを収益で回収するのは困難です。それだけに、システム導入においては職員一人一人のパフォーマンスを高め、適正な医療によるコスト削減と安全性の確保が重要になります」と大山氏。「今回、一緒にシステムを開発してくれたオーシーシーと医療の現場の協力によって、当院に適したオーダリングシステムが導入され、医療の安全性と効率化に向かって一歩前進できたと思います」と涌波氏は、導入の成果を総括した。

 同院のシステム開発はまだまだ終わっていない。オーダリングシステム内の文書管理機能及びデータの自動転記を活用して、入退院サマリーや情報提供書などの種々の書類作成システムの開発も進められ、これからの発展に期待が寄せられている。

USER PROFILE

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特定医療法人アガペ会 北中城若松病院

特定医療法人アガペ会の医療機関として1987年に創設された高齢者医療専門病院。病床数は223床、内科、精神科、リハビリテーション科を備え、特徴ある5つの病棟を構えている。今回のオーダリングシステムの導入について同院の涌波院長は、「地道に一歩ずつ、できることから頑張っています」と話す。“コストをかけず、システムに自分たちの工夫を取り入れ、上手に活用している病院”の好例といえるだろう。

〒901-2395 沖縄縄県北中城村字大城311
URL:http://www.agape-wakamatsu.or.jp/

会社案内

インターシステムズジャパン株式会社
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-10-1 日土地西新宿ビル17F
TEL:03-5321-6200 URL:http://intersystems.co.jp/

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INDEX

  • Cachéベースのオーダリングシステムで現場の業務に適したIT化を推進
  • 家族も支える為の高齢者医療を目指す北中城若松病院の取り組み
  • 当院に合ったオーダリングシステムを模索
  • システム選定後は各部署間の調整と運用の変更を徹底的に検証
  • 慢性期医療での安全性と効率性をめざして
  • データキューブ製品の本格展開で地元医療機関のIT化を推進するオーシーシー

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