Caché/Ensembleを中核にした医療情報システムで“1法人・1患者・1カルテ”を実現し、地域クリニックとの連携を推進

鹿児島市に3つの病院と介護老人保健施設、奄美諸島に2 つの病院を構える財団法人 慈愛会。総病床数1422床、職員数1852名の規模で、クリニックから急性期医療病院、慢性療養施設までの広範な医療体制を有している。同会では、すべての病院を「患者様の目から見て日本一の病院にする」という目標を掲げ、医療の継続性と安全性を確保するために、院内はもちろん、グループ内(地域)における医療情報の共有化を進めている。

それを実現するための取り組みとして“1法人・1患者・1カルテ”を目指し、このほどCaché/Ensembleを中核とした医療情報システム「med@cube」を採用した。

オーダリングシステムの見直しを機に電子カルテを検討

黒野 明日嗣氏
財団法人 慈愛会 介護老人保健施設 愛と結の街 施設長 黒野 明日嗣氏

 財団法人 慈愛会では、グループ内(地域)における医療情報の共有化を進めるためにITソリューション課を創設し、医療の継続性と安全性の確保に取り組んできた。その経緯について同会の介護老人保健施設「愛と結の街」施設長の黒野明日嗣氏は次のように振り返る。

 「当会では6年前から電子カルテを導入していましたが、我々が満足できるシステムではありませんでした。それでもオーダリング機能だけを利用してきましたが、導入から6年を経過してシステムのレスポンスが低下してきたこと、またバージョンの違いから市内の2つの病院でデータの互換性を確保できないといった課題を抱えるようになったのです」

 同会は、今村病院、今村病院分院、谷山病院、愛と結の街という4つの診療施設を鹿児島市内で運営しており(図1)、これらの病院間で情報を共有できる「1法人・1患者・1カルテ」を目指している。ほかにも、情報を電子化する方針として、地域クリニックとの連携、高齢者の生活情報を記録することによるライフサイクルのサポート、さらには医師の診療や研究支援の促進なども視野に入れている。

図1.
図1. 財団法人 慈愛会 。今村病院、今村病院分院、谷山病院、愛と結の街という4つの診療施設を鹿児島市内で運営している(画像クリックで拡大)
慈愛会 URL:http://www.jiaikai.or.jp/

「我々が目標とする電子化のために、3期に分けたシステム更新プロセスを計画しました。その第1期の取り組みとして地域のクリニックへの情報提供、2つの急性期病院の電子的な統合を推進しました。その際、オーダリングシステムのバージョンアップをきっかけに、Caché(キャシエ: 高性能オブジェクトデータベース)を中核にしたmed@cube(メディカルキューブ)の採用を決めたのです」と黒野氏は説明する。

「レスポンスのよさ」を最優先した結果、Cachéを選択

 Cachéを選択した理由について黒野氏は、「Cachéは検索スピードが速く、データ量が増えてもレスポンスが落ちないという利点がありました。また、Ensemble(アンサンブル:統合/開発プラットフォーム)の採用によって他システムとのデータ連携や接続性が向上する点も評価しました。さらに、オブジェクト指向開発言語との親和性が高いので、アプリケーション開発が迅速に行える点にも期待しました」と述べる。

 数々の診療システムを研究してきた黒野氏は、電子カルテの必須条件を「レスポンスのよさ」と断言する。カルテの入力においてはいまだにペンと紙による記入が効率的だと考え、それなら、表示速度や検索性能、視認性といった出力の面で紙のカルテを上回る性能を実現しなければ、現場の医師をサポートできるITソリューションにはなりえないと判断したという。

 「現場で発生するミスの多くは、指示を出す人が正確な情報に即時にアクセスできないことが原因だと思います。米国の統計資料によれば、回避可能な薬剤事故の50%は処方ミスに起因しているといいます。したがって、必要なときに必要な情報を素早く示すシステムを構築することが医療の質の向上につながると考えたのです」(黒野氏)。

 一般的な診療行為における患者の満足度は、長時間の診療や丁寧な説明、親切な対応、設備の充実など、量的な競争になりがちだというが、医療の質を患者に実感してもらうためには迅速な情報の提供も重要である。その目標を実現するためには、業務プロセスの電子化は必須の課題だ。

分散した病院を1つにする1法人・1患者・1カルテ

 総病床数1422を擁する慈愛会では、市内に複数の病院を分散することで広いエリアをカバーしているが、患者情報の分散や限られた情報のみの共有という課題を抱えていた。この問題を解決し、分散した情報を1つにする1法人・1患者・1カルテを実現するために、市内の病院をネットワークで結び、Cachéで管理された単一のデータベースを閲覧できるシステムの構築が進められていく(図2)。

図2.
図2. 市内の病院、病院と連携医療機関をネットワークで結び、データベースを共有(画像クリックで拡大)

 「データベースにCachéを採用している点や、Webブラウザによるアクセス、柔軟な検索条件の設定、ストレスのない瞬時の検索機能などを評価してmed@cubeを採用しました。例えば、患者情報の管理画面では、複数の患者名から同一人物であるかどうかを判断するために、性別や住所などを組み合わせて確率で可能性を表示する仕組みを採用しています」と黒野氏はシステム構築の状況を説明する。複数の病院間で単一のカルテを共有できるようになれば、医療の質の向上だけでなく、開放型病院としてクリニックの医師との連携も強化される。

 「当会のシステムでは、一部のデータをクリニックからもインターネット経由で参照できるようにしています。こうすることで、地域のクリニックも、検査データや処方データ、画像データを閲覧できるようになります。もちろん、データの連携や閲覧に関しては、すべて患者と病院、クリニック間で契約が成立した場合に限っています。紹介状を電子的にやり取りし、必要なデータを正確に連携させることによって患者の安心感も高まると考えています」と黒野氏は強調する。

 1法人・1患者・1カルテへの取り組みは、将来的には高齢者のライフサイクルをサポートするための重要な役割も果たす。急性期病院と在宅医療機関、介護老人保健施設が1つの電子カルテで結ばれることによって、高齢者の健康を包括的にサポートできる仕組み作りが可能になるというわけだ。

 「医療情報を電子化する取り組みにおいては、単に現状の業務を置き換えるのではなく、電子化によるメリットが最大になるような業務プロセスの改善が重要です。それを支えるために、大量のデータを高速に処理し、レスポンスと視認性の高いシステムの導入が求められます。大量の情報をストックし、そこから新たな発見や成果を得て患者にフィードバックできる電子カルテがあってこそ、医療の質と患者の安全が確保されるのです」(黒野氏)。

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INDEX

  • オーダリングシステムの見直しを機に電子カルテを検討
  • 「レスポンスのよさ」を最優先した結果、Cachéを選択
  • 分散した病院を1つにする1法人・1患者・1カルテ

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