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GSK Hematology Conference 2013年7月20日(土)東京ミッドタウン Hall A

Opening Remarks

早稲田大学理工学術院教授 池田 康夫

 本カンファレンスで取り上げる慢性リンパ性白血病(CLL)は患者が少ない希少疾患であり、基礎的な研究ならびに治療法の開発が遅れていた。しかし永年続けられてきた専門家らによる病態の詳細な研究が実を結び画期的な治療が登場した。
 CLLについては、腫瘍性Bリンパ球の表面抗原CD20の大ループに加え小ループをも認識する抗体医薬「アーゼラ®」が登場して、その効果がおおいに期待される。
 CLLに対する画期的な薬剤に関するカンファレンスが開催されたことの意義は大きい。

慢性リンパ性白血病 (CLL)

 カンファレンスでは、慢性リンパ性白血病(CLL)のわが国における現状と、2013年3月に「再発又は難治性のCD20陽性の慢性リンパ性白血病」の効能効果で製造販売承認を取得したヒト型抗CD20モノクローナル抗体「アーゼラ®点滴静注液100mg・1000mg」[一般名:オファツムマブ(遺伝子組換え)]の臨床試験の結果および日常診療における治療戦略についての講演が行われた。演者を務めた名古屋第二赤十字病院 血液・腫瘍内科 部長小椋 美知則氏は、「既存の化学療法で十分な効果が得られ難かった再発・難治性のCLLにオファツムマブ単独療法で効果が期待でき、治療の選択肢が増えた意義は大きい」と総括した。

アーゼラ®の国内臨床試験成績

座長

畠 清彦
公益財団法人がん研究会
有明病院 血液腫瘍科
部長

演者

小椋 美知則
名古屋第二赤十字病院
血液・腫瘍内科 部長

 慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia;CLL)は、成熟した小型のBリンパ球が、単クローン性に末梢血、骨髄、リンパ節などで増殖する疾患である。わが国のCLLの罹患率は約 0.5人/10万人で、欧米の罹患率約4.4人/10万人と比較して極めて少ない。発症年齢中央値は68歳で、50歳以上の発症が多く、30歳未満はほとんど発症しない。男女比は約 2:1である。

(表1) 日本における主な治療選択肢

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 米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインではクロラムブシル**、フルダラビン、リツキシマブ等が推奨されているが、わが国ではこれらクロラムブシル**、リツキシマブは未承認、もしくは適応がないのが現状である。そのためわが国における薬物治療の選択肢は限定的であり、また高齢者の多いCLLでは造血幹細胞移植の適応となる患者も限られる。(表1)

 化学療法の第1選択は、フルダラビン単剤療法、フルダラビンを中心とした多剤併用療法、シクロホスファミドと他の薬剤の併用療法である。第2選択は、第1選択で実施しなかった治療法か、他のリンパ腫に対する化学療法(適応外)である。欧米の大規模な臨床試験を経てR-FC療法(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド)が標準治療になっているが、前述の通りリツキシマブがCLLにおいては本邦未承認であるために実施することが困難である。こうした治療の選択肢が限られているなかで、新たに登場した抗体薬がオファツムマブである。

CD20に対して強固な結合と穏やかな解離

 オファツムマブは、リツキシマブと同様にBリンパ球表面のCD20分子を標的とした完全ヒト化モノクローナル抗体である。CD20陽性CLL細胞では、他のB細胞リンパ腫と比べてCD20の発現が少ない。CD20は4回膜貫通型の分子で小ループと大ループの2つの構造を細胞外に持っている。リツキシマブが大ループのみを認識するのに対して、オファツムマブはCD20の小ループおよび大ループに特異的に結合することで抗腫瘍効果を発揮する(図1)。In vitroではリツキシマブより強力な補体依存性細胞傷害作用(CDC)を発揮し、腫瘍性Bリンパ球を破壊する。CD20への結合はリツキシマブと同程度に強力である一方、対照的にCD20から解離する時間はリツキシマブの約2倍と緩徐であり、リツキシマブなど他の抗CD20抗体に比べユニークな特徴を有する(図2)

図1 アーゼラ®の作用機序

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図2 CD20発現とCDC誘発(in vitro)

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欧米、国内第I相臨床試験の結果

(表2) 【日韓共同第I/II相試験】奏効率

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 オファツムマブの主な臨床試験には、欧米で実施された第II相試験(OMB111773/Hx-CD20-406)と日本の第I相試験(OMB111148)および日韓共同で行われた第I/II相試験(OMB112758)がある(表2)。OMB111773/Hx-CD20-406試験では、フルダラビンおよびアレムツズマブ**に抵抗性の患者、フルダラビンに抵抗性かつ巨大リンパ節腫大によりアレムツズマブ**治療が適切でない患者もしくはフルダラビンまたはアレムツズマブ**に忍容性が認められなかったCLL患者223例を対象に行い、オファツムマブの評価すべき抗腫瘍効果が認められた。

 わが国では、500mgと1000mgの用量増量試験が第I相試験として実施され、続いて2000mgを投与する第I/II相試験が実施された。

 第I相試験では、再発・難治性のCLL/SLL(小リンパ球性リンパ腫)または濾胞性リンパ腫(FL)患者を対象に、忍容性、安全性、有効性の評価が行われた。本試験では再発・難治性のCLL 2例およびSLL 4例が登録された。フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブの前治療歴があり、その中央値は2レジメンであった。オファツムマブは、初回300mg、2回目の投与以降は1週間間隔で500mgまたは1000mgを2〜8回投与した。前投与として、アセトアミノフェン、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤の静脈内投与を実施した。ただし、副腎皮質ホルモン剤は投与1回目および2回目のみ投与し3回目以降の投与は不可とした。

 第義蟷邯海侶覯漫⇒冦明限毒性(DLT)に該当する毒性は認められず、オファツムマブ500mgおよび1000mgの忍容性が確認された。初回投与時に、全例にinfusion reaction(注入に伴う反応)の発現が認められたが、2 回目投与以降は発現率が減少した。

 infusion reactionは、いずれもGrade 1または2で、投与中断もしくは対症療法により管理が可能であった。副作用による投与中止例はなく、計画したすべての投与を完遂した。6例中1000mg群の3例で奏効を認めた。以上から、オファツムマブの忍容性、安全性、有効性が確認された。

  1. * 本邦において慢性リンパ性白血病に対しては適応外
  2. ** 本邦未承認

日韓第I/II相試験の結果

 日韓共同の第I/II相試験は、既治療のCLL患者10例を対象に、パートAで2000mg投与の忍容性の評価を、続いてパートBでは奏効率を主要評価項目として検討した。また副次的評価項目として効果発現までの期間、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間、安全性について評価が行われた。患者背景として被験者の内訳は日本9例、韓国1例、男女比は7:3、年齢中央値67歳、罹病期間中央値は5.2年であった。

 オファツムマブを初回300mg、2回目投与以降は1週間間隔で2000mgを7回、さらに8回目以降、4週間間隔で2000mgを4回点滴静注した。初回投与後52週まで経過観察した。

 その結果、DLTに該当する毒性は認められず、日本人における2000mgの忍容性が確認された。

(図3) 【日韓共同第I/II相試験】末梢血リンパ球数の推移

Ogawa Y, Ogura M,et al. Int J Hematol 2013 一部改変
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(図4) 【日韓共同第I/II相試験】 Infusion reaction 発現状況

Ogawa Y, Ogura M,et al. Int J Hematol 2013 一部改変
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 10例中7例に奏効(完全寛解(CR)+部分寛解(PR))が認められ、効果発現までの期間の中央値は、8.1週[8.0〜24.1週]であった。奏効期間中に進行(PD)と判定された患者は認めなかった。また、10例中2例で観察期間中に病勢進行が認められたが、その他の8例はPDと判定されず、死亡も認められなかったため、解析期間中におけるPFSの中央値は推定できなかった。治療期間中、末梢血リンパ球数は減少し、10例中8例では経過観察期間でも明らかな再増加は認められなかった(図3)

 有害事象のうち infusion reactionはすべての症例に認められたが、多くはGrade1または2で、1回目または2回目の投与時に認められた。また、投与回数の増加に伴い発現率は減少し、infusion reactionによる投与中止例は認められなかった(図4)

 以上から、既存の化学療法で十分な治療効果が認められない再発・難治性CLLに対してオファツムマブ単独療法は効果が期待できる治療法であり、これまで治療の選択肢が非常に少なかったわが国でも再発・難治性CLLに対する治療選択肢が拡大された意義は大きいと考えられる。

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