臨床医が抗インフルエンザ薬に求める特性は安全性と即効性

柏木現在、わが国では抗インフルエンザ薬として、主にザナミビルあるいはオセルタミビルが使用されています。ザナミビルは発売10年を迎えますが、岩城先生は河合先生と合同で、ザナミビルの使用実態調査をされたそうですね。

岩城はい。吸入薬であるザナミビルはデバイスを使用するため、経口薬に比べ使用が控えられていましたが、最近ではその有用性が認められ、広く普及するようになりました。そこで、昨シーズン日本臨床内科医会の会員を対象に、ザナミビルの使用実態に関するアンケート調査を実施し、501人から回答をいただきました。
まず、抗インフルエンザ薬で最も重要と思われる製品特性について尋ねたところ、「安全性」(44.7%)と「即効性」(41.1%)が重視されていることがわかりました(図1)。効果の持続時間に関しては、「有効性、安全性の面から効果発現後は速やかに代謝される薬剤が望ましい」と、7割弱の方が回答しています(図2)。これは、副作用が起きた場合、薬剤の服用を即座に中止することで速やかに体内から排出される薬剤のほうが安心して使用できるからだと考えられます。

図1インフルエンザ治療薬で最も重要と

思われる製品特性

図2インフルエンザ治療薬における

効果持続時間に対する考え方

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柏木河合先生は長年、抗インフルエンザ薬の臨床効果を検討されていますので、簡単に説明していただけますか。

河合2007年〜2008年のH1ソ連型流行時、2008年〜2009年のAソ連型(オセルタミビル耐性株)流行時、そして昨年の新型インフルエンザ流行時を含め、ザナミビルはA型インフルエンザに対し、3シーズンを通して投薬から解熱までの時間が30時間前後で効果を維持していました(図3)。

柏木オセルタミビル耐性株、新型インフルエンザに対しても効果が認められることから、ザナミビルの有効性には安定感を感じますね。

廣津B型インフルエンザに対しても、服薬後、解熱までの時間はザナミビルが35.5時間、オセルタミビルが48.9時間でした。ウイルス排出時間はザナミビルが3.5日、オセルタミビルが4.5日と、これもザナミビルのほうが良好でした。

柏木日本臨床内科医会(日臨内)会員を対象としたザナミビルの使用実態調査でも、ザナミビルの臨床効果の高さが裏付けられていますね。

河合はい。調査対象者の約9割の先生方が、ザナミビルの効果発現は早く、安全性も優れていると回答しています。投与回数や投与日数に関しても、高く評価されています。毎回確実に薬剤が気道系に入ることによって、高濃度の薬剤でウイルス増殖を抑制している安心感があります。また、複数回服用するので、万が一服薬に失敗しても、次の服用で補うことができます。

柏木多くの先生方が安全性も高いと感じていらっしゃるわけですね。

岩城ザナミビルは吸入薬ですので、発売直後は気管支痙攣など慢性呼吸器疾患患者への影響が指摘されていましたが、実際には異物吸入による反射的な咳が認められる程度です。

池松市販後調査の結果によれば、4456例中の副作用発現率は1.3%〜1.6%で、慢性呼吸器疾患を含むハイリスク患者と非ハイリスク患者で、副作用発現率に差はありませんでしたから、ハイリスク患者にも使用できる薬剤だと思います(図4)。

図3AH1N1各型における抗インフルエンザ薬

投与開始後の解熱時間

図4ハイリスク因子の有無・種類別にみた副作用発現率

(市販後調査結果より)

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全タイプ*のインフルエンザにザナミビルは有用性を示す

柏木抗インフルエンザ薬の薬剤選択はどのように考えればよいのでしょうか。

廣津臨床現場では、迅速診断キットによりウイルスのタイプを判定し、効果の高い薬剤を選択します。しかし、A型インフルエンザの場合、迅速診断キットでは亜型までは同定できません。つまり、オセルタミビル耐性のAソ連型か否かを区別できないため、すべてのタイプ*のインフルエンザウイルスに有効なザナミビルを第1選択薬としています()。

岩城日臨内の使用実態調査でも、ザナミビルの処方理由として、「全タイプ*に効果がある」が最も多く挙げられています(図5)。また、「効果がよい」「副作用が少ない」「即効性がある」との回答も多いので、使い勝手に優れた薬剤と認識されているのではないでしょうか。

タイプ別にみた抗インフルエンザ薬の有用性

図5ザナミビルを処方する理由(複数回答)

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柏木吸入デバイスは小児でも問題なく使用することはできますか。

廣津10歳未満の場合でも、保護者に十分な説明を行い、装填してもらえれば問題なく吸入できます。5歳以上であればザナミビルの吸入は十分に可能だと感じていますし、臨床効果も得られています。

(*:新型、Aソ連型、A香港型、B型インフルエンザ)