PET検査で公的保険が適応される疾患は?
2002年4月から、12の疾患(がん10種類、虚血性心疾患、てんかん)については、健康保険でPET検査を受けられるようになりました。しかし、保険適応となるのは、いままでの検査や画像診断などで確定診断ができないものという条件がついています。
がんの早期発見のために必要な健康診断目的のPET検査は、保険適応外のため自由診療(受診者が医療費を全額自己負担すること)で受けるということになります。
悪性腫瘍 |
肺がん |
・他の検査、画像診断でその存在を疑うが病理診断により確定診断が得られない患者
・他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない患者 |
乳がん |
大腸がん |
頭頚部がん |
悪性リンパ腫 |
・他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない患者 |
悪性黒色腫 |
脳腫瘍 |
・他の検査、画像診断により転移・再発の診断が確定できない患者 |
膵がん |
・他の検査、画像診断で膵がんの存在を疑うが腫瘤形成性膵炎との鑑別が困難な患者 |
転移性肝がん |
・他の検査、画像診断でその存在を疑うが病理診断により確定診断が 得られない患者
・原発巣の不明な患者 |
原発不明がん |
・リンパ節生検、CT等で転移巣が疑われ、かつ、腫瘍マーカーが高値を示す等、悪性腫瘍の存在を疑うが、原発巣の不明な患者 |
心疾患 |
虚血性心疾がん |
・虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織バイアビリティ診断が必要とされる患者。ただし、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合に限る |
脳疾患 |
てんかん |
・難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる患者 |

PET健診を受けるにはいくらかかる?
健康診断目的の場合
PET健診を実施しているのは現在、大学病院、総合病院、健診センターなどですが、施設によって、かなりバラつきがあるのが実情です。
一応の目安としては、
1. PET検査だけの場合:8〜15万円
2. PETを中心とする総合検診の場合:15〜23万円
(PET検査以外にCT検査、超音波検査、血液検査、腫瘍マーカー等が含まれます)
22pに全国PET健診施設一覧を掲載していますので、お近くの施設に電話でお問い合せください。
も有効だ。写真4は、右の上咽頭がんの症例。がんによって頭蓋底の骨が壊れているのが、FUSION画像で分かる。

PET検査は、苦しくないか?
麻酔をしたり、内視鏡を入れたりということがないのでとても楽な検査です。検査の流れをざっと説明しましょう。
検査前の5〜6時間は絶食です。また、甘い飲み物もひかえてください。まず、PET製剤のFDGを静脈に注射します。
その後1時間程度、薬剤が全身に行きわたるまで、安静にしています。ガムをかんだりすると、使ったあごの筋肉にもFDGが集まって擬陽性となるので注意してください。
排尿後、15〜30分ほどPETカメラのベッドに寝て、全身の撮影を行います。カメラはCTやMRIの装置に似ていますが、狭くはなく、大きな音もしません。注射から検査終了まで2〜3時間程度みておけば十分です。
撮影した画像は専門医によって読影され、診断結果が患者に説明されます。

なぜ、検査前に食事をしたり、甘い飲み物を飲んではいけないのか?
PET検査では、がん細胞が検査薬であるFDGを大量に食べるのを観察しています。ですから検査前に食事や甘い飲み物を飲んでしまうと、がん細胞は満腹になって、肝心の検査薬を食べなくなってしまうからです。検査後に糖分の含まれない水をたくさん飲んでいただくのは、余分なFDGを腎臓から排出してもらうためです。
糖尿病の患者さんが、PETに向いていないのも、血糖値が高くてFDGの細胞への取り込みが悪いからです。

PETで見つけやすいがん、見つけにくいがんは?
PET健診を主体にした施設からのデータによると、見つけやすいがんのベスト4は、肺がん、甲状腺がん、大腸がん、乳がんといわれています。
逆に見つけにくいがんは、腎臓や膀胱など、FDGの排出経路あるいは、その付近にあるがん。高分化型などと呼ばれる進行の遅いがん。胃がん、一部の肝細胞がんなどです。

CTとPETの違いは?
CTは、体の外からX線をあてて、体の組織による透過の違いをセンサーで受けて画像化しています。ちょうど体を透かして見るようにして、体内の組織の「形」を診ているので、「形態診断」と呼ばれています。
一方PETは、ブドウ糖や酸素などいくつかの体内で用いられる物質に放射性物質をくっつけて印をつけ、それが体内でどのように代謝されるかを体内から発する放射線の量で見ています。細胞の代謝などの「機能」を見ているので、「機能診断」とも呼ばれます。
PETの機能診断とCT、MRIなどの形態診断を組み合わせることで、がんの見逃しを防いだり、不必要な手術を避けて、より効率的な治療法を選択することができます。
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