■PETの基礎知識
 
 宇都宮セントラルクリニックでは、PETを中心とした総合的がん健診のほか、徹底した健康管理を目標に会員制のセントラルメディカル倶楽部を運営している。ここに登場する関氏は、そのがん健診によって早期の甲状腺がんが発見され、「命を救われた」と語る。
 

PET受診のきっかけは

佐 藤 関さんとは、私がクリニックを開設する前からのおつきあいですね。今回、PET健診をお受けになったきっかけというのは?
 ええ、私の弟が医者をやっていたんですけど、数年前、肝臓がんで亡くなりました。亡くなる前、他の大学病院などでは分からなかったがんを佐藤先生が見つけて下さったのがおつきあいの始まりですね。で、身内にそんなこともありまして、ちょっと神経質になって、毎年MRIで健診を受けていました。ただ、私も結構仕事が忙しくて、入院してがん健診を受ける暇はなかったんです。そんな折、先生のクリニックだと最新のPETという装置で、入院しないでも全身のがんがチェックできると聞いたものですから、うちの社長と二人で先生の主宰されるメディカル倶楽部の会員になってPET総合健診を受けたんです。
 ところで先生、がんというのは遺伝するものなんでしょうか。
佐 藤 遺伝性のがんというのは全体の5%程度、約95%は生活習慣などの環境要因が関連しているといわれています。ただ、同居しているご家族というのは、ほぼ生活環境が同じなので、どなたかががんになったら、他のご家族もがんになる確率が高いということになります。
 PET検査のご感想はいかがでしたか?
 検査自体は、痛くないですし、とても楽でした。注射を打ってから、1時間程安静にして、そのあと30分位ですか、PET装置のベッドに寝ていたのは。何もしないでじっとしていると長く感じるので、頭の中でゴルフコースを回っているところを想像しました。でも、問題はそのあとでしたね。
佐 藤 そう、関さんの場合は、翌朝お電話しました。

がんが見つかって

 何かあったら、1週間以内に電話しますということだったんですけど、翌朝電話があったんで、車ですっ飛んで行きました。で、着いたら先生に「関さん残念でしたね」と言われたのを今でも覚えています。何か頭のあたりをが〜んと殴られたような気がしました。でも、うろたえたら格好悪いなと思って、平静を装ってみたんですけど、いかがでした。
佐 藤 やあ、結構落ち着いて見えました。さすが、会社で責任のある方だなと。
 それで、先生が画像を見せながら甲状腺にがんがあることを説明してくださったんですけど、まず、治るんですかとお聞きしたと思います。
佐 藤 はい、それで関さんの場合は、まだ小さいし転移もないので、手術すれば大丈夫、まず組織をとって調べてみましょう、病院も紹介しますからとお伝えしました。
 実は私、以前風邪のあとに肺がんと誤診されたことがありまして、そのときは2日眠れませんでした。でも、今回は先生に治るとおっしゃっていただいたので、わりと落ち着いて車を運転して帰宅できました。せっかく先生が病院も紹介してくださったのですが、建設業という商売がら、近くの大学病院にコネがありまして、手術はそちらの病院ですることになりました。と申しますのは、そのときいくつか仕事をかかえていたものですから、相当無理を言って検査は通院で済ませて、その間に何とか仕事はかたづけてしまいました。ですから、入院は手術する段階のみで…。
佐 藤 なにか、会社には海外旅行に行くとおっしゃったそうで。
 ええ、社長には本当のことを伝えておきましたが、他の人には取引先のこともありますので、余裕をみて2週間位海外旅行に行くと言っておきました。
佐 藤 手術自体は、いかがでしたか?
 おかげさまで、順調にいきまして1週間位で退院しました。何しろ海外旅行に行ったことになっていたので、その後は家で静養してました。傷もきれいに縫ってくれて、あごの下に隠れて分かりにくいものですから、こちらから言わないかぎり気づく人は少なかったですね。

がんこそ早期発見が大切

 ところで先生、私の場合は、PET健診で早くに見つけていただき、手術して、今このようにピンピンとしていられるのですが、普通、甲状腺がんというのは、どのように見つかるのでしょうか。
佐 藤 甲状腺というのは、一般の人間ドックなどの検診では診ませんから、関さんの場合はPETの全身スキャンだからこそ、見つかったともいえます。がん細胞というのは、通常大きくなるために、他の正常な細胞に比べて、3〜8倍ブドウ糖を食べる。PET検査はそれを診ているので、関さんのような微少ながんでも見つけることができたんです。それで、普通はですね、甲状腺がんが見つかるのは腫瘍がある程度大きくなってからです。首が腫れてきたとか、リンパ腺がグリグリするとか、自覚症状がでてきて分かるんです。よくいう腫瘍の病期分類※1でいうとステージIIIとかステージIVといわれる段階です。ちなみに関さんの場合はステージIという、とても早期の段階でした。
 一般にがんというのは、1cmを超えると急激に大きくなるといわれています(図1)。自覚症状で気がつく位になってしまうと、手術で大きな部分をとらなくてはいけなくなって、機能障害がでてくることもあります(図2)。甲状腺がんの場合は、反回神経という声帯を動かすのに関係している神経を切ってしまう場合もあります。そうすると、術後の後遺症で嗄声(させい)といって声がかれたり、声が出しにくくなってしまうんです。
 私は、仕事上お客様のところへ行って、色々しゃべるのが商売ですから、早く見つからなかったら、えらいことになるところだったわけですね。
佐 藤 それどころか、ステージIVになって、がんが他の臓器にも転移してしまうと、これはもう手遅れで…。
関 命もあぶないと。まさに私はPETで救われたというわけですね。
佐 藤 ええ、ですから、がんこそ早期発見が大切なわけです。

PETを中心とした総合的がん健診を

佐 藤 そういえば、最近、関さんのご紹介という患者さんを何人か健診で診させていただきましたが。
 ええ、私は先生に命を救ってもらったんで、今度は少しは役に立とうと思って、最近、友人に会う度に、PET健診を勧めてまわってるんです。PETの伝道師なんて言うやつもいますけど。でも、我々の世代というのは、もうがむしゃらに働いてきて、体のことをあまりかまわないんですよね。それと、まだ、健診の費用が高いというのもあるんですけど、なかなか受けないですね。私も弟をがんで亡くさなかったら、受けなかったかもしれません。
佐 藤 確かにお金の問題は大きいですね。保険がきくようになったといっても、健康診断目的ではだめですから。PET健診だけでも7万5千円に諸費用が加わって10万円近く。総合健診だと倍以上かかりますからね。最近、企業の中には、社員がPET健診を受けるときに、何割か補助をだしてくれるところも、でてきましたね。
 なるほど。私なんかは、これからうちの会社の幹部になる連中は、みんなPET健診を受けさせたほうがいいんじゃないかと。そのほうが、脳ドックあたりで脳みそのスカスカ度をチェックするより、よほど会社のリスクマネジメントとしてはすぐれてるんじゃないかと、思っているんですけど。
佐 藤 ええ、アメリカあたりは、すでにそういう傾向がでてきているといわれてますね。
 先生、これからPET健診を受ける方へのアドバイスとしては、どんなことがあげられますでしょうか?
佐 藤 そうですね、2つあります。1つはPETもパソコンと同じで、どんどん新しい性能のいい機械がでてきてます。せっかく健診を受けるのでしたら、そういう新しい機械のあるところで受けて欲しいですね。
 2つめはPETだけでなく、CT、MRI、超音波などを含めた総合的ながん健診を受けて欲しいということです。PETといえども、100%何でも分かるわけではありません。がんの見落としを防ぐためには、PETのような糖の代謝を調べる機能診断と、CTやMRIのような解剖学的な形を調べる形態診断と、両面からアプローチすることが大切なんです。

 

PET画像を見るときの注意点
・ 横断像はベッドに仰向けに寝た患者を足下から見ているので、患者の右が向かって左。上が腹部で下が背部
・ 冠状断像は、患者の右が向かって左になる
・ FDGを注射すると、ブドウ糖の消費量が多い脳と心臓には正常でもFDGが集まる。また、FDGは尿に排泄されるので、腎臓、尿管、膀胱もFDGが集まって見える。これらは、生理的集積と呼ばれている

 
※1 腫瘍の病期分類:通常、ステージ0からIVまでの五段階であらわされ、数が大きくなるに従ってがんの進行度が高くなる
※2 FDG:正確には18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)。フッ素18をブドウ糖にくっつけたPET製剤