■PETの基礎知識
 
 現在我が国のPET施設は、研究用と臨床用に大きく分かれる。研究用は、公立の研究施設や大学病院などが先端医療の一環としてPETを利用している。一方、臨床用のPET施設は、がんの健康診断を目的とした健診センター、そして、主にがんの診療を目的とした、大学病院、総合病院といった施設に分かれる。
 

PET健診を思い立った時、どこに行けばいいのか

 まず、気軽にPET健診の相談に乗ってくれて、受診申込も容易な施設は本誌冒頭に登場していただいた「宇都宮セントラルクリニック」のようなPET健診センターである。それでは、大学病院や総合病院のPET健診はどうなっているのか。ここでは、東京女子医大と姫路中央病院のPET検査施設に話を聞いてみた。

東京女子医科大学病院総合外来センター 核医学・PET検査室

 東京女子医科大学病院総合外来センター核医学・PET検査室(東京・新宿区河田町)は、女子医大建学100周年記念事業の一環として総合外来センターを設立する際に、日立製作所との産学協同プロジェクトとして発足した。2003年5月にPETカメラ1台でスタートし、2005年2月からはPET-CTも稼働する。最終的には全部で3台のPET装置で1日30人程度の診断を行うという。
 「施設を設計するときに一番助かったのは、日立製作所が持つノウハウを生かすことができた点です。例えば放射線の被曝についても、あらかじめコンピュータでシミュレーションを行って、それを設計に生かすことができました。患者さんの動線を考え、問診室、安静室、トイレひとつとってもいろいろと気をつかってあります。患者さんも、もちろんですが医療従事者の安全の問題も考慮した、世界に誇れる施設ができたと思います」。こう語るのは、東京女子医科大学放射線科教授の日下部きよ子氏。
 PET検査室開設当初は、保険診療と自由診療(患者が診療費用を全額自己負担すること)の比率は6対4程度。現在は5割が自由診療。共同事業のため、将来的には6割を自由診療にするのが目標だという。この施設の受診者は、やはり女子医科大学関連病院からの紹介が多い。また、自由診療の健診受診者も、以前がんの手術を受けた患者さんが、その後のチェックの目的で受ける例がほとんどだ。PET検査室の運営方針について、日下部氏は次のように語る。「がん診療第一ですから、どんなに込んでいてもがんの治療法決定のための診断を最優先します。また治療後の経過観察も待ったなしですから優先的に診ます。大学病院の大きな使命は地域医療に還元することなので、PET検査という最先端の医療をがん診療につなげるというのがこの施設の使命だと思っています」。
 では、通常の健診目的の場合はどうしたらよいのだろうか。その場合は、女子医大の中にある「成人医学センター」で人間ドックの健診項目の一つとしてPETを指定すればよいとのことだ。「ご家族にがんの方が多い、理由もなくやせてきた、貧血があるなど特にがんの不安のあるかたは、この検査を受けることによって安心を得る、そういう目的で使っていただくのもよいと思います」。
 また、もしがんが見つかった場合でも、大学病院の特性を生かしてすぐ各科に紹介してもらえる。術後も経過観察をきちんと行いフォローしてくれる。このようなところが女子医大でPET健診を受けるメリットといえよう。

姫路中央病院附属クリニック PET画像センター

 姫路中央病院(兵庫県姫路市)は、1970年に脳神経外科の専門病院として設立された。開設当初は脳神経外科を中心に、その診療をサポートする神経内科、腹部外科、整形外科でスタートした。その後内科、循環器科、麻酔科などを加えたが、各科の専門性を生かすという基本姿勢は変わらないという。現在の病床数は260床。地元では脳神経系と腹部外科が優れた外科系の病院として知られている。
 2004年7月、病院の附属クリニックに併設する形でPET画像センターを開設。PETカメラ2台でスタートして、半年間に約1,200件の検査を行っている。保険診療と自由診療の比率は4対1、全体の2割が健診だ。
 「当院では健診も行っていますが、保険診療、つまりがん患者さんの診療のための検査をメインにやっていこうと思っています。当院だけではなく、地域の病院、診療所の先生方に医療連携の一環としてPET検査を利用していただきたいと考えています。そのため地域の先生方や一般の方に、がんやPETについての講演をさせていただいたり、センターのPRを行うなどの努力をしています。臨床PET施設の多くが3〜4カ月待ちの状態であり、これでは1日を争うがんとの闘いには問題があると思います。
 PET検査の良いところは、がんの発見だけではなく、がんの進み具合や広がりが正確に分かることです。これによって手術適応や手術の範囲が正しく決まり、治療方針を選択でき、再発という名の見逃しがなくなります。がん患者さんは複数のがんを持っていることもあります。実際に胃がんの術前にPET検査を受けて、大腸がんの合併が見つかった方が、すでに複数おられます。またPETは治療の効果を早期に判定できますし、術後の経過観察にも大変有用です。このようにPETはまず、がん診療に使うことを考え、同時にがん健診についてもがんを診療するという視点から実施しています」と副院長の東靖人氏はPET画像センター運営の方向性について語る。
 開設にあたっては全国のPET施設を多数見て回ったというだけあって、施設の設計も、受診者、スタッフの動きと被曝に配慮した機能的かつ洗練されたものとなっている。また以前に、姫路にあった研究PET施設が廃止され、長年PET検査に従事してきた職員に準備段階から参画してもらうことができた。施設の設計、機器の選定が的確に行え、レベルの高い設備と人員の双方を備えたPET画像センターの誕生につながった。がんの診療を第一に考えてのスタートで、当初の受診者は深刻な方が多かったが、最近はPETの知名度が上がり、「会社から言われてきました」などという明るい受診者も増えている。
 「我々の施設はがん診療を日常的に行っているセンターです。ここで健診を受けていただくメリットは、まず診断精度と、もう一つは診断から治療まで一貫性のあるアプローチができることです。PETで疑いのある病変が見つかった時、すぐにCTやMRIをとって、フュージョン画像を作ったり、翌日内視鏡の検査をすることが可能です。診断医だけでなく治療医の意見も同時に聞くことができます。また近隣の国立医療センターや県立粒子線治療センター等との連携も深めていて迅速で広い範囲の対応が可能です」。

どこにも異常は感じないが念のために、という場合にはPET健診センターに

 家族にがんが多い、理由もなくやせた、貧血があるなど、がんの不安がある場合は大学病院、総合病院へ、というような選択もできるようだ。

 
<日経ビジネス別冊 Special Ad Sectionより>