■インタビュー
 

兵庫県立成人病センターでは、昨年(平成17年)10月にPET検査の保険診療をスタート。1年後の今年10月までに約1800件の検査を実施した。兵庫県のがん拠点病院である同センター診療部長 足立秀治先生にPET導入の成果を聞いた。

―兵庫県立成人病センターは、がん拠点病院としてスタートしていますね。

足立先生 当センターは昭和 37 年( 1962 年) 9 月、神戸市生田区に兵庫県がんセンターの病院として発足し、昭和 46 年( 1971 年) 4 月にこれを県に移管して県立病院がんセンターと改名。その後、昭和 59 年( 1984 年) 5 月に現在の明石市に移転して現在の名称になりました。当センター概要(パンフレット)の「設置の目的」「施設の機能及び特色」にも記載されていますが、“悪性腫瘍等各種成人病に対する高度医療の提供”、そして“がんを主体とした成人病の専門的な治療を行う”ことが主眼です。現在の病床数は 400 ですが、そのうち 85 %はがん患者です。すでに地元や関西では一般の方にもがん専門病院として知られていますが、今後はがんに特化した診療を行う方針であり,がん診療連携拠点病院として申請中です.がん拠点病院としての認識を全国的に図るうえでは、診療内容のアピールや名称の再検討が必要だと考えています。

―昨年(平成17年)3月にPET/CT検査機器を導入されました。導入の経緯は。

足立先生 平成17 年度の外来患者は 1 日平均で 671 人。 1 年間の患者延数では 16 万 3639 人となります。また入院患者を見ると、新入院患者数 5598 人、退院患者数 5670 人。患者延数では 13 万 3369 人。正規医師 79 名と専攻医,研修医 17 名でかなりの患者を診ていることになります。先ほど言いましたように、これらのほとんどががんに罹患した患者さんやがんの疑いのある患者さんで、治療前の病期診断 (拡がりの程度) や手術後の再発・転移を診断することを主目的に,県下のがん拠点病院としての診療機能を果たすために県の方針で PET/CT を導入しました。ご承知かと思いますが、 同じ画像診断でも CT や MRI 検査は、体の中の組織や細胞の「形態」を画像で捉える。つまり、細胞の「かたち」からその異常を見つけます。これに対し PET は、細胞の「機能」、言い換えれば「働き」を画像でとらえる検査法です。導入した PET/CT は、がんに対して「形態」「機能」の両面からアプローチすることが可能であり、最新の診断機器といえると思います。

―現在の診療内容とこれに携わる方々の陣容は。

足立先生 PET/CT 検査は、デリバリー PET ( FDG の核種を病院内で製造せず、メーカーの工場で製造したものを搬送(デリバリー)してもらい PET 検査を実施する方式)で 1 日当たり 8 件、ひと月では約 150 件実施しています。今年(平成 18 年) 10 月でちょうど 1 年が経ちましたが、年間約 1800 件行いました。患者さんの内訳はだいたい半分くらいが肺がん、その他が乳がん、悪性リンパ腫、大腸がん,悪性黒色腫で、今年 4 月以降、食道がん、子宮がんが増えてきました。現在、当センターの放射線科医は 10 名。このうち診断医が 6 名、放射線治療医は 3 名,専攻医 1 名です。診断医 6 名のうち PET の読影に当たる医師は私を含めて 2 名。 PET/CT を導入して、やはりがんの精密検査でその診断精度が上がり、迷う症例が少なくなったことは確かです。

― 今春、一部報道で「 PET のがん見逃し」が取り上げられ、 PET 検査への不信感が広がりましたが。

足立先生  当センターは全て保険診療であり、自由診療、つまり任意のがん検診である PET 検診は行っていません。患者さんもほとんどががんに罹患した方やがんの疑いのある方で自分でもよく勉強されている。むしろ PET が話題になったことで患者さんからよく質問が出ます。その時、私は「診療や精密検査で PET を使うこととがん検診の違い」や「健常な人のがん検診とがん患者の病期診断(拡がりの程度)や再発・転移を診断することの違い」を説明します。こうした説明を丁寧に行うことで患者さんから PET 検査に対する信頼を得られると考えています。がんの早期発見を目的とした PET 検診だけを実施する施設では、報道による影響が出たと聞いていますが、当センターでの影響は全くありませんでした。 PET 検査は、当センターの症例では、肺がん、乳がん、悪性リンパ腫、大腸がん、食道がん、そして頭頚部のがんの診断にその有用性を発揮します。放射線科医師、つまり診断医と外科、内科などの治療医が PET の有用性を理解し、共通の認識を持つこと。そして、このことを正しく患者さんに伝え啓蒙していくことが必要だと思います。