■インタビュー&コラム
 

 「トリノオリンピックの女神は、荒川静香にキスをしました! 日本の荒川静香、金メダル!」
 2年前のアテネ五輪、体操男子団体決勝で「栄光への懸け橋だ!」との名ぜりふを残したNHKの刈屋アナが、また再び、神がかりともいえる金メダルの実況中継。次の瞬間、感動の津波が日本中を襲った。
 あるシンポジウムで、金メダリストの鈴木大地氏から聞いた話では、金メダルを取るというのは、実力プラス超人間的な力を得たときなのだそうだ。長野、ソルトレーク、トリノの冬季3大会に参加した日本選手387人のうち、金メダリストは6人。誇張された金メダル報道の中、冷静に考えれば、金メダル獲得の確率は約1.5%しかない。
 当センターのPET検診でがんが見つかる確率が、大体1.5%くらいである。こちらも誇張されたがん検出の報道の中で、実際はなんと少ないことか。しかし、受診者の不安は大きい。問診で生の声を聞いていると、PETによるがん検診を思い立ったはいいが、その日が来るのが憂うつで、前日に寝られない人が多い。「がんと診断されたら、どうする? 家族は? 仕事は?」と。
 
 PET検診で使う放射性薬剤は、グルコース(糖)の疑似餌であるFDGである。これを注射で体内に入れると、代謝が盛んな部位に取り込まれていく。がん細胞は増殖するためのエネルギー源に糖を使うので、疑似餌のFDGを取り込み、“集積像”として釣り上げられる。
 しかしFDGはがんだけでなく、炎症などへも集積するため、肺の炎症、五十肩、甲状腺の機能異常なども検出される。このため受診者の約30%に異常が発見される。PETとCTを組み合わせたPET/CT検診では、CT画像の異常としてがん以外にも、肺結節、脂肪肝、腎結石、前立腺肥大、心臓の冠動脈石灰化などが、受診者の約60%に見つかる。
 
 50年、60年生きていると、何らかの異常はあるものだ。五輪でも、金メダルを取る人、入賞する人、参加だけの人と、幅広いスペクトラムがあるように、PET検診の結果も、「がん」から「追加検査必要」「放置可」「正常」までと幅広い。PET検診は「がんがあるかないか」ではなく、「健康と病気のどのスペクトラムに、自分が位置しているか」を確認する検査と考えてほしい。またPET/CT検診では、CT画像により病気をある程度特定できることで、さながらピンをデッドに狙うアプローチ診断ができることもある。
 
 PET検診センターは、病院ではない。検診を受けるためのアメニティが充実している。我々のセンターのモチーフは“パティオ”である。辞書によれば、パティオとは「中央に噴水があり、花が咲き乱れている美しいスペイン風の中庭」とある。この庭の原型は、アラブからきた。砂嵐を避けるべく、4つの家が外壁で四角い空間を作り、外は砂嵐でも中では歓談ができる機能的な空間であったそうな。我々のセンターのパティオでは、都会の砂塵にまみれ、酷使した体を休ませる安堵の空間を感じてほしい。
 
 さて、がんかどうかは金メダルの確率。もしがんと診断されても、早期がんの可能性が高い。肺がんで手術をして1ヵ月で仕事に復帰された人もいる。
 PET検診の前日は、過激な運動をやめて、検査の5時間前から絶食をお願いしたい。これは、FDGの疑似餌としての効果が低くなるためである。ただしミネラルウォーター、お茶など、砂糖を含まない飲み物は検査に影響がない。
「では、明日、問診室でお待ちしています」