■フォーラム概要
 
 「PETは、早期がん発見の切り札」など、がん検診で過大評価されたPET。その後、PETが不得意とする前立腺がん、腎臓がんなどの見逃しが大きく報じられ、PETそのものへの信頼性が大きく揺らいでいる。しかし、がんの精密検査におけるPETの有用性は、その病期診断、治療効果判定、そして転移の診断等で証明されている。これらの現状を踏まえ、さる10月30日、大阪に全国の主要なPET専門医が集結し、「PET画像診断フォーラム」を設立。向こう3年間の活動計画について話し合った。
 

 初めてFDG薬剤を使った、PET検査が始まったのは1980年。日本ではここ数年間、PETによるがん検診がブームとなり、「がん早期発見の切り札」、「5mm以下のがんが見つかる」など、誇大ともいえる広告がなされたり、マスコミがそのまま報道するなど、その実力以上の評価が喧伝されました。PETにはその部位によって発見しにくいがんもあり、その見逃しが大きく報道されることで、今度はPET検査の信頼性までもが否定されることもありました。

PET検査の正しい知識を
具体的にわかりやすく伝える

 しかし、私たち専門医の立場からは、やはり、「PETはがん検診の最先端」であり、他の検査では不可能ながんの発見、診断ができる有用性の高い検査法です。PET検査に関する正しい知識の啓蒙、そして広報活動の必要性を感じ、日本でもPET専門医としてはトップクラスの12名の先生に集まっていただきました。
 PET検査の役割と効果を整理すると、(1)がんの早期発見、早期診断による早期治療の実現。その結果、がん治癒率の向上が期待できること。(2)がん転移を把握して、がんの病期が判定できる。そのことにより、不必要な検査の省略、適切な治療方針を早く決断できること。(3)がん治療の効果を判定できること。が、挙げられます。この中で、(2)の病期診断については保険診療が認められているのに、がん治療の効果判定にPET検査をすることが、自費診療となるという事実はあまり知られていません。
 PETの基礎知識に加え、こうしたことを具体的にわかりやすく解説し、問題点があれば、それを取り上げて議論する。その結果、PETに関する正しい知識を広めていくことが、「PET画像診断フォーラム」の役割であると思います。

患者・一般消費者と医師への
2方向の広報活動が必要

 現在、保険診療で認められているがんのPET検査は、頭頚部がん、肺がん、乳がん、転移性肝がん、膵がん、大腸がん、悪性リンパ腫、脳腫瘍、原発性不明がん、悪性黒色腫の10疾患です。がんの種類によっては、他の検査に先駆けて最初にPET検査を実施することが、診断の決め手となり(これをPETファーストと言います)、患者さんに負担をかけず、また医療費を節約する効果があるにもかかわらず、保険診療では認められていない現状もあります。また今後は、患者数が比較的多い婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)、食道がんに保険適用を拡大する必要があります。こうしたPETに関連する現在の問題点や、正しい知識は、患者さん・一般消費者だけではなく、開業医、専門医の先生方へ情報発信して、一緒に考えていただくというスタンスが必要だと考えています。
「PET画像診断フォーラム」HP
 具体的な活動は、年2回開催する会合での討議。これを受けて、日経BPのWEBサイトに、「PET画像診断フォーラム」ホームページを開設します。ここには、PET画像診断フォーラムメンバーの先生方の協力を得て、「PETの基礎知識」、「トピックス」、「全国PET施設紹介」などの、患者さん・一般消費者向けのページ。そして医師を対象とした、「症例検討」、「専門医Q&A」などのコンテンツを掲載する予定です。PETに関心のある多くの方々がこのサイトを訪ね、PETに関する正しい知識を共有していただき、問題点を把握、そしてPET発展のためにご協力いただけることを願っています。

 

PETブームの時こそ、正しい情報を
横浜市立大学医学部教授 井上登美夫 氏

私自身がPETと最初に出会ったのは、22〜23年前。そして、ここ数年はまさにPETブームともいえる状況です。ブームであるからこそ、PETに携わる専門医は、正確な情報を他の医療関係者、患者さん、検診を受けられる方に伝える義務があると思います。このフォーラムに参加して、情報発信することがその一助となれば幸いです。

健診PETは、“大きく目の粗い網”
横獨協医科大学PETセンター長 村上康二 氏

健康診断のためのPET検査を私は、魚を採る網に喩えて説明します。各臓器別の検診を“小さい目の細かい網”とすると、PETは、“大きく目の粗い網”です。目が粗いので小さながんを逃したり、ある種の捉えにくいがんはあるが、サイズが大きいので、一度の検査で広範囲のがんを見つけることができる。特定の症状がない場合、PET検査を受診して安心することも、その利点だと思います。一方、精密検査におけるPET検査の有用性は、病期診断、治療効果判定、そして転移の診断等で証明されています。これらの事実をわかりやすく正確に伝えていくことが必要と考えます。


主治医との信頼関係をつくる
厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

主治医から紹介される患者さんの場合、必要なのは、その主治医と信頼関係をつくることです。PETを依頼して、すごく役立ったというケースがあると、主治医は患者さんに対してPETの有用性を自主的に語るようになります。私はこのフォーラムを通じて、特定領域の医師にPETがどれだけ役に立つかという症例を具体的に提示して、PETに対する信頼性を高めていきたいと思います。


PET画像診断フォーラム・メンバー

前列左から、● 武田病院画像診断センター長 林田孝平氏 ● 横浜市立大学医学部教授 井上登美夫氏
● 会長 鳥塚莞爾氏 ● 獨協医科大学PETセンター長 村上康二氏 ●兵庫医科大学 核医学・PETセンター長 臨床核医学 臨床教授 柏木 徹氏
後列左から、● 東海大学医学部放射線科講師 高原太郎氏 ● 東天満クリニック院長 松村 要氏
● 厚地記念クリニック院長 陣之内正史氏 ● セントラルCIクリニック院長 塚本江利子氏
● 済生会中津病院PETセンター長 岡村光英氏 ● 日本医科大学放射線科講師 高木 亮氏
● 京都大学医学部核医学画像診断 中本裕士氏
※上記メンバーに12月から新たに、兵庫県立成人病センター診療部長 足立秀治氏が参加。