PET-CTとは?
PET-CTは、生体の機能をとらえるPETと、解剖学的な形態をとらえるCTの双方の長所を併せ持つ診断装置であり、診断精度の向上と検査時間の短縮がその特徴だ。米国ではPETのおよそ7割はPET-CTといわれ、我が国でも2003年秋に認可されて以来、新しくできるPET施設は最初からPET-CTを導入するところが多い。
名前はPET-CTだが、PETとCTが同時に撮れるわけではない。構造(図1)をみれば分かるように、まずCTで撮影を行った後、ベッドがさらに奥に動いて、PETの撮影を行う。
撮影後は放射線科専門医が、まずPET画像の読影を行い、疑わしいものについてCT画像および「CTとPETの合成画像(FUSION:融合画像)」をチェックする。

キーワードはFUSION
PET-CTの特徴は大まかにいって、次の2つに集約される。
1. PETで見えない病変をCTで拾い上げることができる。
2. 解剖学的な位置情報を正確に把握することができる。(FUSIONで可能)
1については、これまでバラバラに行われていたPETとCTの検査が1回の受診で済み、PETおよびCTの特性を生かした複合的検査が可能になったということである。
写真2は、高分化型肺腺がんというゆっくりと進行するのが特徴のがんだ。糖の代謝が盛んでないので、FDGがあまり集まらず、PETでは分からない。しかし、CTでは形の変化がはっきりと現れているのが分かる(矢印)。
2については、これまでも、別々に撮影したCT画像とPET画像を合成してFUSION画像を作成し、診断してきた。PET-CTではどこがちがうのだろうか?
「従来のFUSION画像というのは、別々に撮影したCT画像とPET画像を画像処理のソフトウエアで補正して位置合わせを行っていました。最近はこのFUSION画像用ソフトウエアも優れたものが出てきてはいますが、胸部や腹部というのは呼吸運動や腸の蠕動(ぜんどう)運動があって動いています。そのため、良い画像を得るのは難しいわけです。PET-CTでは、同じベッドに寝たままCTの画像を撮った後すぐにPET画像を撮るので、リンパ節のように細かい組織まで正確に位置を合わせることが可能で、診断の精度を上げられるわけです」と陣之内氏は解説する。
肺がんの例(写真3)をみてみよう。まん中のPET画像だけでは、病変部位が肺かリンパ節か、その他の臓器かが不明である。左のCTをPETと併せたFUSION画像(写真3右)をみると、肺がんの右上に、リンパ節への転移があることが分かる(白矢印)。また、背骨の部分にも転移があり、骨が破壊されていることが分かる(赤矢印)。
またPET-CTは、頭や頸(くび)など解剖学的に複雑な場所にも有効だ。写真4は、右の上咽頭がんの症例。がんによって頭蓋底の骨が壊れているのが、FUSION画像で分かる。
PET検査受診者への配慮
このPET施設では、検査が終了した後その日のうちに、受診者への説明を15分程度行っている。その理由を陣之内氏は、次のように語っている。
「検査後の説明は、受診者にとってメリットが大きいと思います。診察した医師から説明を受けて、結果がすぐ分かり、もし疑問な点があればその場で解決することができます。どの程度の病変なのか、がんの可能性が高いのか、また早急に紹介状が必要な場合もあり、直接、医師とその場で紹介先などの相談ができます」。
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