■2006.06.26 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 日本医科大学健診医療センターは、今年2月20日にオープンしたばかりの新しい施設である。PETによるがんの精密検査の保険診療が認可されたのが4月1日。本格的な施設稼動からまだ2ヵ月余りである。しかし、すでに症例は500を超える。精密検査の依頼は、母体である日本医科大学付属病院、都立駒込病院からが多い。同センター設立の契機について、所長の石原圭一氏は次のように語る。

院内の専門医からの要望が設立の契機

 「PET検査施設を院内に設置したいとの要望は、付属病院内の呼吸器科、血液内科の専門医から上げられていました。肺がん、リンパ腫の精密検査にPETが有用であることがすでに理解されていたからです。これに加えて理事長など病院トップ、放射線科教授が核医学分野に詳しく理解があった。これらの好条件が基盤となりました。」
 しかし計画が決まっても、同センターの収支計画に見合う患者数を確保するためには地道な啓発活動が必要だった。まず院内を石原氏が担当し、2月、3月は毎週医局会や部長会に出席してPET検査の紹介を。また診療終了後、各医局ごとに集まってもらい、60分ほどのパワーポイントを使ってPET検査の有用性を説いて回った。呼吸器科、血液内科以外の専門医に理解を求めることが必要だったからだ。院外、特に都内の中小病院、開業医を対象とする活動では、放射線科教授の汲田伸一郎氏が医師会の協力を取り付け、精力的に健診医療センターの役割を啓蒙した。 その効果もあり、開業医の数人は実際に自費でPET検査を受診。その効果を体感した上で、PET検査の必要な患者を紹介するようになった。

きめ細かな受診者対応を心がける

 現在、同センターには2台のPET/CTが設置されているが、がん検診用に島津製作所製を。精密検査用にフィリップス製をと使い分けている。がん検診では、まずPET検査だけを行い、PET薬剤の強い集積、つまりがんを疑う部位のない場合は、これで検査を終了する。もし強い集積がある場合は、続けてCT検査を行う。この検査方式の意味は健常な受診者により多くの被曝を与えないことである。
 「言葉で説明すると簡単ですが、PET検査後、数分でPET画像をモニターに描出することはこれまで難しかった。このセンターを開設するに当たり、実はメーカーにこの検査方式が可能になるようにとの宿題を出したんです」と、石原氏。一般にPET/CTを設置している施設では、がん検診の場合、一度にPET、CTを撮影することが普通である。同センターは、がん検診の場合、受診者の放射線被曝軽減に配慮し、きめ細かく検査を実施している。
 一方、異常があった場合はどのように対処するのか。「これはがんを疑う」となった場合、当日のうちに受診者に知らせ精密検査の手続きを取る。この時、付属病院との連携が生きる。つまり同センターと病院診療各科の窓口は、こうした患者を迅速に診る取り決めがなされているのである。がんのスクリーニング、精密検査、そしてがん治療という流れが一貫しているという点は、大学病院の検査施設であることの強みといえるだろう。

総合健診医療センターへ

 健診医療センターという名前について石原氏は、「本当はPETセンターという名前にしたかったのですが、保健所の指導があり、この名前に落ち着きました」と笑う。
 PETの文字を施設につける場合は、病院の同敷地に位置する付属施設や病院内の検査部門であれば、もちろん問題はない。同センターは、付属病院と目と鼻の先の距離にあるものの、別の敷地に独立した診療施設として開設されており、それにふさわしい名称を、とのことである。
 また、この名称の意味するところは他にもある。現在進められている付属病院や大学キャンパスの改築に併せて、将来同センターはPET、MRIに加え、内視鏡、心電図、脳波、超音波、CTなどの検査装置を導入し、総合的な診療・検査・健診センターにスケール・アップさせる構想がある。その時には、健診医療センターの名称に「総合」の文字が名実共に冠せられることになる訳である。