■2006.06.26 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

どのような人がPET検診を受けているか

 栃木県壬生町にある獨協医科大学病院に、昨年4月にオープンしたPETセンターは、開業当時からPET検査によるがん検診に人間ドッグの要素を加えた、2種類の検診コースが用意されている(表1)。大学病院の付属機関という性格上、検診受診者は全体の1割、月に20〜30名とあまり多くない。大部分は獨協医科大学病院やその他の病院からの紹介で、がんの精密検査を目的として、保険診療で受診する患者だ。表1のほか、PET/CT検査だけのコースもあるが、単独でこのコースを受けることは勧めていない。提携している近隣の医療機関で、PET検査以外の検査を受けた上で、PET/CT検査だけを同センターで受診する形で利用されている。
 一方、JR京都駅前にある武田病院画像診断センターでは、1ヵ月に100名ほどがPET検査による検診を受けている。これに対しがんの精密検査を目的とする受診者は月200名前後で、獨協医科大学病院のPETセンターと比べると、検診の割合が高い。コースは表2に挙げた2種類で、「総合がん検診エグゼクティブコース」が6割、「がん検診PET/CTコース」が4割だという。
 PET検診の受診動機を同センター長・林田孝平氏はこのように分析する。「女性では60歳代で、身内の方や、親戚、友人をがんで亡くした方が多いですね。がんという病気が身内の方の看病を通じてより身近になり、また遺伝性の要素が大きいことを自覚された結果だと思います。男性の場合、40歳代後半から50歳代。これまで仕事が忙しくて、自分の体にかまっていられなかった。しかしどうせ検査するなら徹底的にしかも短時間で済ませたい。こういう方が多いように思います。」

PET検査施設、検診コースの選び方

 PET検査の長所は1回の検査で全身のがんをスクリーニングできることだ。しかし部位によっては、PET検査で発見するのが苦手ながんもある。そのため日本核医学会のガイドラインでは、血液や尿、便の検査や、CT、MRI、超音波など他の画像診断を組み合わせた、総合的なPET検診を推奨している。
 しかし実際には、施設によって検査内容に違いがあるため、一般にはどれがいいのか分かりづらい。どんな点に注意して選んだらいいのか、村上氏と、林田氏に、見極めのポイントを挙げてもらった。

1. PET検査以外に自分が受けたい検査が入っているか

 がんの中でも日本人に多いのが、胃がん、肺がん、大腸がんである。PET検査では特に早期の胃がんを見逃しやすいため、バリウム検査や内視鏡検査など胃を対象としたPET以外の検査が含まれているかがポイントである。入っていない場合でも、オプションで追加できるとより安心だ。
 これらのがん以外でも、家族歴などから心配ながんがある場合には、PET検査以外の検査でフォローしておきたい。例えば腎臓がん、膀胱がんや男性の前立腺がんなどは、やはりPET検査が不得意とするがんなので、これらのがんが気になる人は、前立腺がんなら腫瘍マーカー(血液検査)が含まれている、あるいはオプションとなっているコースを選ぶとよい。

2. 専門の医師が診断にあたっているか
 医師がPET検査の画像を見て、異常がないかどうかを判断することを「読影」という。同じ外科医でも手術の上手下手があるように、この読影のスキルも医師によって差があるのが現実だ。つまりPET検査施設を選ぶときは、どのような医師が読影に携わっているかも重要なポイントとなる。
 実際には、一般の人が医師の読影レベルを知るのは、ほとんど不可能に近いが、手がかりの一つとなるのが、パンフレットやホームページなどに、PET検査の責任者が明示されているかどうかだ。できれば、日本医学放射線学会や日本核医学会に所属している放射線の専門医が、責任医師として常勤するPET検査施設で受診したい。

3. バックアップ体制が整っているか
 ほとんどのPET検査施設は検査を専門としており、治療までは行わない。万が一PET検診でがんなどの異常が発見された場合、その後、速やかに精密検査、確定診断、治療へと移行できるよう、他病院との連携が整ったPET検査施設を選んでおくと心強い。このバックアップ体制をチェックするには、パンフレット等に連携している病院名が記載されているかがポイントである。

4. PET/CT装置を導入している施設を選ぶ
 このほか、PET/CT検査装置のある施設を選ぶことが大切である。PET/CTは、PETとCTが一体化した最新の検査装置で、現在、全国のPET検査施設で順次導入が進められている。PETとCTの検査が一度で済むため、受診者の負担が少なく、またPETとCTの画像をより精緻に合成できるので、診断精度の向上が期待できる。

PETによるがん検診受診の適齢期、その間隔は

 PETによるがん検診は何歳ぐらいから、どのくらいの間隔で受けるのがいいのだろう。「PET検査に限らず、若いころからどれだけ頻繁に検診を受けたとしても、『100%これで安心』ということはありません。そのことを理解したうえで、年齢や生活習慣、家族歴(家族の病歴や死因)、また検診にかかる費用や時間、PET検査やCT検査の微量の放射線から受ける被曝の問題などを考慮しながら、リスクとベネフィットを秤にかけて、検診とつきあっていく姿勢が大切です」と村上氏は話す。
 年齢としては、多くのがんの発症率が高まる50歳前後が、一つの目安となる。がんの多い家系だったり、喫煙などがんの危険因子がある人は、もう少し早い時期から受け始めるのもいいだろう。
 また受診頻度については、年に1度、PET検査を中心とした総合検診を受けるのが理想とされているが、それが難しい場合は、今年はPETの総合検診、来年は消化器系のがん検診、その翌年はまたPETの総合検診で、さらに次の年は婦人科系のがん検診……というように、PETの総合検診と部位ごとのがん検診を、1年おきに受けるという方法も考えられる。
 ただし、くり返しになるがPET検査にも見つけづらいがんはある。PET検査を過信して、毎年PETによるがん検診だけを単独で受ける、というのは勧められない。健康な状態、無症状な状況にあって、むしろその段階で自分自身に合った検診スタイルを見つけることが大切である。