■PET画像診断フォーラムについて|PET画像診断フォーラム開催報告第二回
第二回PET画像診断フォーラム
 
さる3月12日、京都においてPET(陽電子放射断層撮影装置)の正しい知識の普及・啓蒙を目的とするPET画像診断フォーラムの第2回会合が開催された。会議の冒頭、「PETによるがん検診は85%もの見逃しがある」との読売新聞記事(3月3日付夕刊)に対して、メンバーの専門医から「PET検査が全く役に立たないとの誤解を与える」、「がん患者に有用なPET検査の意義が理解されていない」など、強い抗議の声が上がった。
 
国立がんセンターのデータは
特殊なデータ

 読売新聞記事に引用されている国立がんセンターのデータは、2004年1年間のがん検診受診者3000名のうち、がんが見つかった人(がん陽性)の総数が150名。そのうちPET検診によってがんが見つかった人(PET陽性)が23名(総数の15%)というもの(表1)。総数の150名はPET検診を受診しているにもかかわらず、127名(総数の85%)については、PET検診ががんを見逃しているとの論旨である。しかし、このデータには同センターが有するがん発見の特殊な能力がその背景にある。
 「国立がんセンターの症例は前立腺がんや早期胃がんなどPET検診では初めから検出が困難という症例が数多く含まれています。また、がんのエキスパートが精密検査のレベルで小さながんをみつける方針で行なった検査ですから、大腸がんや乳がんなどもかなり小さなものが含まれています。PET検診の信頼性を計る母集団としては特殊なデータと言わざるを得ません」。(獨協医科大学・村上先生)
 ちなみに民間医療機関が発表しているPET検診でがんが見つかる確率(PET陽性率)は、48%〜64%と高い数値を示している。

 
PETは万能ではない。
他の検査を組み合わせてがん検診を実施
 一方、「全身の5mm以下の小さながんが見つかる」、「PETはがんを発見する万能の検査装置」とマスコミを中心にもてはやされていたことに対して、今回のいわば“PETたたき”が、PETの本当の実力を一般に理解してもらう良い機会と捉える意見も上がった。他の画像診断装置と同様にPETも万能ではない。例えば、肝臓がん、腎臓がん、前立腺がん、そして早期胃がんなどはPETが不得意とするがんである。これらの見逃しを防ぐため、ほとんどのPET検査施設ではPETの弱い部分を補うため他の検査を組み合わせる総合的ながん検診が実施されている。
 「現在はPETにCTを組み合わせたPET/CTが主流です。この新しい検査装置によってPETで見つからない種類の肺がんを見つけることができます。またPETが不得意な肝臓がん、腎臓がんではMRIを組み合わせて検査することもあります。また胃や大腸のがんの発見は内視鏡に勝るものはありません。検診受診者の症状に応じてオプションとしての検査を奨めています。これらはPETがん検診についての核医学会のガイドラインに沿ったもので、PET単独での検診はごくわずかです」。(厚地記念クリニック・陣之内先生)
 PET検診の意義は、小さながんを残さず見つけるのではなく、全身を苦痛なく、通常の検診では調べない部位(子宮体部や膵臓など)まで含めて調べられるということにある。現にPETに他の検査を加えた総合検診によって、数多くの受診者のがんが発見され救命されている。こうしたがんの早期発見の可能性のある人々が「PETは役に立たない」と誤解して検診そのものを拒否することは避けねばならない。
 
PETの本当の実力とは。
婦人科がんのPET検査が新たに保険適応に
 さらに今回の記事により、「がんの精密検査目的のPET検査」まで、検診同様に有用性が低いと誤解された可能性がある。PET検査の本来の目的は、がんの精密検査として、CTやMRIでは分からないがんの再発や転移、病期の診断に用いることである。
 「今年4月の保険改訂で、現在10種類のがんに認められているPET検査の保険適応が新たに婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)と食道がんに拡大しました。医療費抑制を推進する厚生労働省がこれを認めたことは、PET検査のがん診断における有用性を認めたことの証左です。がん患者にとってPET検査は苦痛なく全身をスクリーニングし、がんの再発、転移を診断できる唯一の検査です。これらの正確な診断をすることで、その後の治療方針の確認や変更がはじめて可能になります。PETの本当の実力はがんの精密検査にあると言えます」。(京都大学・中本先生)
 フォーラムメンバーからは、今回の報道によって、専門医以外の医師へも「PETは役に立たない」という誤解を与えたのでは、との指摘があった。こうした認識の医師ががん患者の主治医である場合、治療前に実施すべきPET検査をしないケースも予想される。  フォーラムでは、今後医療レベルの低下を招かないために、一般に加えて専門医以外の医師への啓蒙も必要であると結論づけた。
 

PETを含む総合がん検診で85%の見逃しはあり得ない

国立がんセンター がん予防・検診研究センター長 森山紀之 先生

 研究者がデータを発表する時は、調査の対象・条件などといった背景をきちんと説明したうえで、議論をすすめます。国立がんセンターのホームページにも掲載しましたが、今回の報道は、それが不十分です。
 「国立がんセンター がん予防・検診研究センター」設立目的の一つに、エビデンス(診断や治療の根拠)の蓄積があり、その中で「徹底的に検査を行ったら、どの位がんが見つかるか」というテーマに基づいて、最新の検査装置とがん専門医のエキスパート集団でがん検診を実施しました。いわば、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)級の診断医が集結したドリームチームで臨んだ訳です。ですから、今回の報道で取り上げられたデータは、かなり特殊なデータといえます。
 胃がんを例にとると、都道府県の民間検査施設では、およそ1000人に1人見つかるのに対し、がんセンターでは100人に1人見つかります。これは、がん専門医が内視鏡を使い、なおかつ普通の検診ではやらない生検・組織診までやっているからです。
 また他のがんに関しても、超音波やCT、MRIなどを相補的に組み合わせて検査した結果、検出されたがんの9割以上が早期がんという結果が得られました。これをPETのみの検査と比較すれば、相対的にPETの検出率が低くなるのは当然です。
 しかし現在ほとんどのPET検査施設では、PET検診といっても最新のPET/CT やPETとその他の検査を組み合わせているので、「実際には85%見逃しは、あり得ない」ということを強調しておきたいと思います。

 
PET画像診断フォーラム・メンバー  


前列左から、
● 武田病院画像診断センター長 林田孝平先生
● 横浜市立大学医学部教授 井上登美夫先生
● 会長 鳥塚莞爾先生
● 獨協医科大学PETセンター長 村上康二先生
● 兵庫医科大学核医学・PETセンター長 臨床核医学 臨床教授 柏木 徹先生
後列左から、
● 東海大学医学部放射線科講師 高原太郎先生
● 東天満クリニック院長 松村 要先生
● 厚地記念クリニック院長 陣之内正史先生
● セントラルCIクリニック院長 塚本江利子先生
● 済生会中津病院PETセンター長 岡村光英先生
● 日本医科大学放射線科講師 高木 亮先生
● 京都大学医学部核医学画像診断 中本裕士先生

(新メンバー)
● 兵庫県立成人病センター診療部長
足立秀治先生


PET画像診断フォーラム・サポート企業
● GE横河メディカルシステム株式会社 ● 東芝メディカルシステムズ株式会社 ● 日本メジフィジックス株式会社
● シーメンス旭メディテック株式会社 ● 株式会社 日立メディコ