Transnasal Endoscopy.2007Nikkei Medical Online吉田行哉氏に聞く 国家公務員共済組合連合会 三宿病院 消化器部長 丁寧な”前処置が、経鼻内視鏡検査のポイント

次回も経鼻で内視鏡検査を望む受診者は約85%

 人間ドックや一般健診で内視鏡検査を受ける方のほとんどは、特別な症状はありません。そこで、なるべく楽で優しい検査を提供しようと考え、2005年の9月に経鼻内視鏡を導入しました。

 また、苦しい内視鏡検査が嫌で検査を受けなかったために、胃癌が手遅れになった患者さんがかなりいることもよく知られています。そこで、楽な検査を提供することで、早期胃癌の発見率も上がるのではないか、という期待もありました。

 実際、検査中の患者さんの様子をみると、経口内視鏡では「苦しさを我慢する、苦しさに耐える」のが精一杯でしたが、経鼻内視鏡では嘔吐反射が少ないので、モニターをみる余裕ができて、「あの赤いのは何ですか?」と質問される方もいますし、私の説明をきちんと聞く余裕もみられます。

 ドック検査の中で最も体に負担がかかるのが内視鏡検査で、終了すると「はあ、やっと終わった。少し休ませてください」という方も多かったのですが、経鼻内視鏡に変えてからは「こんなに楽なら、来年もお願いします」という受診者が増えています。

 実際、アンケート結果をみても「次回も経鼻で検査を受けたい」という受診者は約85%と、非常に高率でした(図1)。

 受診者が苦しまない分、私たち医者も落ち着いて検査ができますが、経口と比べて視野が狭く、画質が若干劣ることは事実ですから、できる限り慎重に、丁寧に、粘膜をなめるように観察することが、早期胃癌の発見には非常に重要です。

 ちなみに、当院における早期胃癌の発見率を経鼻と経口で比較したところ、数字的には経口の方がやや高めでしたが、統計的有意差はありませんでした。

 さらに、今まで内視鏡検査を嫌って検査を受けなかった方も、気軽に内視鏡検査を受けられるようになりますので、臨床的意義は非常に大きいと思います。


ドック受診者の約80%が経鼻を選択

 当院における上部消化管の内視鏡検査数は、2005年が約2,800件、2006年が約3,500件、今年は6月末で約1,800件。このうち、経鼻内視鏡による検査数は、2005年(9〜12月)が約100件、2006年が約1,100件、今年は6月末で既に1,000件を超えていますので、経鼻内視鏡を実施した症例数は、この6月で約2,200件に達しています。

 一方、人間ドックに限って経鼻内視鏡の検査数をみると、2005年(10〜12月)は61件、2006年は617件、今年は385件(6月末段階)で、経鼻の占める割合は、昨年が約60%、今年は約80%になっています(図2)。

 このように経鼻で内視鏡検査を受ける方が増えている原因の一つは、「三宿病院に行くと、苦しくない内視鏡検査が受けられる」という評判がクチコミで広がっているためと思われます。また、経鼻についてご存じでない方には、受診の際に経鼻と経口のメリットとデメリットを正確に説明して、最終的に患者さんの選択に任せていますが、ドックや一般健診では「苦しくない検査」を選ぶ傾向が顕著にみられます。
 
 こうした受診者の期待を裏切らないためには、前処置をきちんと行うことが大切です。当院では、内視鏡検査技師の免許をもった看護師が前処置を行っています。丁寧に確実な前処置を行って、安全な挿入経路が確保できれば、受診者の苦痛はほとんどありません。しかし、受診者に対するアンケート結果をみると、「高度な鼻の痛みや違和感」「嘔吐反射」を訴える患者さんが、まだ数パーセントいますので、経口よりは圧倒的に楽な検査ですが、前処置のさらなる改善が必要だと考えています。

 また、経鼻内視鏡終了後から翌々日までの間に「気になる症状がありましたか?」というアンケート調査を実施しています。現在、121名の受診者から回答をいただきましたが、87%は全く無症状で経過し、気になる症状としては、「軽度の鼻水」や「鼻の違和感」を訴える程度でした。したがって、経鼻内視鏡は非常に安全な検査だといえます。

 このように、経鼻内視鏡の導入は、受診者に楽で優しい検査を提供すると共に、内視鏡検査のハードルを下げて、今まで検査を嫌がっていた方も気軽に検査を受けられるようになりました。また、その評判が広がることで受診者数が増え、病院経営にも貢献しています。

 今後、多くの施設が経鼻内視鏡の導入を行うと思われます。しかし医者にとって、経鼻内視鏡検査は、けっして甘い検査ではありません。

 癌の臨床病理を熟知することはもちろんのこと、経鼻内視鏡の特徴をよく知った、経験豊富で熟練した医者が使うからこそ、経口と同等の早期胃癌発見率が得られることを忘れてはいけません。

 その意味でも、いたずらにメリットだけを強調するのは非常に危険だと考えています。経鼻内視鏡の普及は、メリットを享受しつつも限界を見極め、慎重に行うことが大切です。


(日経メディカル開発)