Transnasal Endoscopy.2007Nikkei Medical Online経鼻内視鏡の普及がスクリーニング検査を変える
静岡県内の総合病院として、初めて経鼻内視鏡を採用した静岡赤十字病院(静岡市)は、この4月に「経鼻内視鏡センター」を開設した。同センターでは月間約 300人の経鼻内視鏡検査を行うことができ、経鼻内視鏡の研究・研修拠点化も目指している。経鼻内視鏡採用の経緯や受診者の評判などを、経鼻内視鏡センター長の川田和昭氏に聞いた。

つらい内視鏡検査がやさしい検査に変わった

 当院の健診センターに経鼻内視鏡を導入したのは2004年10月です。そのきっかけになったのは、同年8月に名古屋で開かれた人間ドック学会のランチョンセミナーでした。その講演の中で流された患者さんの評判などを紹介したビデオを見ても、当初は半信半疑でした。

 しかしその後、経鼻内視鏡を採用している施設を見学し、実際に自分も体験して驚きました。苦痛がほとんどないのです。まさに「胃カメラの検査が患者さんにとってやさしい検査に変わる」と実感した瞬間でした。

 そこですぐにデモ機を使って、ボランティアや職員の検診を行ってみたところ、かなり評判が良かったので、半月後には実機を採用し、検査を始めました。その後、約2年半が経過しましたが、その間に3000人を超える人が経鼻内視鏡検査を受けています。

 患者さんの評判はかなり良く、アンケート調査の結果をみると、経口内視鏡検査を経験したことのある受診者の97%が「楽だった」と答えています。また、「次に内視鏡検査を行うときは、経鼻にしますか」という質問には、経口内視鏡検査経験者の97%、未経験者でも約89%が、「経鼻」と答えています(図1)。

 実際、経鼻内視鏡を採用する前は、ドック健診で内視鏡を選択する受診者の割合は10%以下でした。みんな、苦しさを知っているからバリウムをのむX線検査を選んでいたたわけです。

 しかし、経鼻内視鏡を採用してから、受診者の約30%が内視鏡検査を受けるようになりました。つまり、「経鼻内視鏡は内視鏡検査のハードルを下げた」といえます。そこで、経鼻内視鏡を2台に増やし、この4月に日本初の経鼻内視鏡センターを開設したのです。

経鼻内視鏡は受診者にやさしいだけでなく、病院経営にも貢献する

 経鼻内視鏡は画像が悪いという人もいますが、現在の第2世代になって飛躍的に画像が良くなり、通常の経口内視鏡と比べても遜色ない画像が得られるようになりました。生検も可能ですから、スクリーニング検査には十分です。

 従来の内視鏡検査では、終わった後に「もう二度とやりたくない」と思う受診者がほとんどだったのですが、経鼻内視鏡検査では、「こんなに楽だとは思わなかった、来年もお願いします」と検査に積極的になる受診者が増えています。

 こうした受診者の期待を裏切らないためには、前処置をきちんと行うことが大切です。経鼻内視鏡検査の成否は前処置で決まるといっても過言ではありません。丁寧に確実な前処置を行うことで安全な挿入経路が確保できれば、患者さんの苦痛はほとんどありません。

 既に述べたように、経鼻内視鏡を採用してから、ドックや一般検診で内視鏡検査を選択する受診者が急激に増えています(図2)。しかし、経鼻内視鏡の波及効果はそれだけではありません。来年も当センターで検診を受けたいというリピーターが増えると共に定着率も高くなっています。

 また、他施設でバリウム検査を受けて要精検となった人が、「日赤の内視鏡検査は苦しくない」というクチコミを聞いて訪ねてくるようにもなりました。そして、精検で問題がないことが分かった後、高血圧や糖尿病、高脂血症などの治療も当院で受けたいという患者さんが増えているのです。

 これから内視鏡検査を始めたいと考えている開業医の先生方にとっては、経鼻であればセデーションの必要は全くなく、リカバリールームやモニター類の設備投資の必要もありません。医療経済的にも有効で安全性が高い経鼻内視鏡検査は、病院経営にもプラスになると考えられます。

 あと5〜6年もすれば、経鼻内視鏡でスクリーニングを行うのが当たり前の時代になるのではないでしょうか。



(日経メディカル開発)