『私の中のあなた』
監督:ニック・カサヴェテス
出演:キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、ソフィア・ヴァジリーヴァ、エヴァン・エリングソン、アレック・ボールドウィン、ジョーン・キューザック
公開年:2009年
時間:110分
発売元:ギャガ

 米国の人気作家、ジョディ・ピコーの小説(『私の中のあなた』、早川書房)の映画化。最先端の技術を使って、姉専用ドナーとして生み出された妹が、姉への臓器提供を拒んで両親を訴えるという、かなり現実離れした物語である。ただ、頭の中が難病の娘でいっぱいの母親、姉中心の生活に不平をもらすことなく姉を気遣う弟と妹、家族を包み見守る父親というように、本作品ではいつの時代も変わらない、病気の子どもを持つ家族の生活が丁寧に描かれている。観終わると、終末期医療のあり方について深く考えさせられる佳品だ。

 病気の子どもを抱える家族の生活が、その子ども中心に回ることは決して珍しくない。幼い頃に白血病と診断され、長い間闘病を続けてきた少女、キャサリン・ケイト・フィッツジェラルド(ソフィア・ヴァジリーヴァ)の家族も同様だ。フィッツジェラルド家は、両親とケイト、そして弟と妹の5人家族。ケイトの症状が安定していれば、難病は食卓での冗談のタネになるが、急変すれば、いつも家族の間に緊張感が張り詰める。

 中でも母親のサラ(キャメロン・ディアス)はケイトのことだけを考えて生活している。看病のために弁護士の職を辞し、毎日オーガニック食材でこだわりの食事を作り、「どんなことをしてでも娘は死なせない」という一心で、ひたすら娘の病に立ち向かう。

 唯一、フィッツジェラルド家が、難病の子どもを抱える他の家族と異なるとすれば、それはケイトの妹、アナ(アビゲイル・ブレスリン)の存在だ。アナは、ケイトが白血病と診断されてから人工授精で生まれ、幼少期からケイトに骨髄や末梢血、幹細胞などを提供してきた。いわば“姉専用ドナー”として作られた妹なのだ。

 ところがアナの献身的な協力も空しく、症状は進行。ケイトは腎不全で余命いくばくもない状況に陥ってしまう。ドナーとして今回も腎臓の提供を求められたアナだったが、彼女は突如驚くべき行動に出る。自分の体を守るため、姉専用ドナーとしてのあらゆる医療行為を拒否したいと両親を裁判所に提訴するのだ。アナは「腎臓を提供すれば、スポーツもチアリーダーもできなくなってしまう」と主張する。

 ケイトに最期の時が迫る中、裁判が進められていく。裁判では、未成年のアナが両親の意に反して医療行為を拒否することの妥当性が争われるのだった。しかし、最後に証言台に立ったアナからは、意外な事実が語られる。

 本作品が日本映画によくある、お涙頂戴の難病映画と一線を画するのは、終末期の医療はどこまで行われるべきか、その決定は誰がすべきかといった、終末期医療を巡って昔から議論されてきたテーマに真正面から向き合っている点だ。

 印象的なのは、不慮の事故で娘を亡くした女性判事(ジョーン・キューザック)に対し、アナが「娘さんのこと、お気の毒に」と子どもながらに気遣うシーン。アナの言葉を聞いて、女性判事が口にする何気ない一言こそ、監督がこの作品が伝えたかったメッセージなのかもしれない。

column
原題の「MY SISTER'S KEEPER」の由来は、旧約聖書「創世記」にあるカインの言葉。弟アベルを殺し、主(神)から「アベルはどこにいるのか」と尋ねられたカインが、「Am I my brother's keeper?」(私は弟の番人でしょうか?)と答えたところから来ている。


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