『ジョンQ 最後の決断』
監督:ニック・カサヴェテス
出演:デンゼル・ワシントン、ロバート・デュヴァル、ジェームズ・ウッズ、アン・ヘッシュ、レイ・リオッタ、キンバリー・エリス
公開年:2002年
時間:116分
発売元:ジェネオン エンタテインメント

 国民皆保険制度が未整備の米国では、民間医療保険が発達している。保険料によってカバーされる医療範囲は当然異なり、安価な保険料では心臓移植といった高度医療はカバーされない。しかも、医療保険者は医療費を“適正化”する目的で様々な管理手法を用い、医療費が過度に使われないようにする。この仕組みはマネジドケアmanaged care)と呼ばれ、1980年代、90年代に米国で発展した。『ジョンQ』は、このゆがんだ米国のマネジドケアを強烈に皮肉った作品である。マイケル・ムーア監督が米国の医療制度をテーマに撮ったドキュメンタリー『シッコ』(2007年)よりも5年も前に公開されている。

 朝、テレビを観ていたジョンQ(デンゼル・ワシントン、QはミドルネームのQuincyから)は表が騒々しいのに気がつく。外に飛び出すとローン不払いで妻デニーズ(キンバリー・エリス)の車が差し押さえられるところだった。ジョンは会社でリストラされ、正社員からパートタイムに格下げ、収入が減ってしまっていたのだ。週末、息子のマイクの少年野球の試合を見に行ったところ、マイクが走塁中、胸を押さえて倒れてしまう。地元の救急病院に運んで診察を受けると、心臓外科部長のターナー医師(ジェームズ・ウッズ)とペイン院長(アン・ヘッシュ)は、マイクは重度の心臓病で心臓移植手術が必要だと告げる。

 ジョンは移植待機リストにマイクを載せるように頼むが、手術費用は25万ドル、しかもリストに載せるためには7万5000ドルの前払いが必要だと言われる。ジョンは「手術費用は保険でカバーされるはずだ」と言うが、ペインからは「あなたが今加入している保険は移植手術をカバーしていない」と言われる。ジョンが会社に問い合わせると、パートタイムに格下げされたとき、会社の都合で医療保険のランクも下げられたことが判明する。

 ジョンは金策に走るが、病院からは支払い不足で、退院勧告がなされる。万策尽きたジョンは拳銃を持って病院に赴き、マイクを待機者リストに載せるようターナーに詰め寄る。結局、ターナーや他の医師、看護師、病院に来ていた患者たちを人質にして、ERに立て籠もる。

 病院周辺はシカゴ市警の警察官に完全に包囲され、見物人も病院を取り囲む。さらにはテレビの生中継も始まって、ジョンは一躍注目の的となる。警察の交渉人グライムズ(ロバート・デュヴァル)はジョンと電話で話すうち、共感を示すようになる。一方、人質となった医師や職員、患者たちも、ER内でジョンの話を聞くうちにマイクに心臓移植手術を受けさせたいと考えるようになる。しかし、市警本部長がSWATにジョン射殺を命令を下し、事件は一気に動き始め、ジョンは「最後の決断」を下す。

 登場人物のほとんどが、米国の保険制度に批判的立場を示すのが興味深いが、ご存じのように2010年にオバマ大統領が成立させた国民皆保険を目指す医療保険改革法は、いまだに保守派から猛反発を受けている。ジョンQの戦いは9年たっても終わっていないのである。

column
監督のニック・カサヴェテスは映画監督のジョン・カサヴェテスと女優ジーナ・ローランズ(『グロリア』で有名)の息子である。心臓病の娘を育ててきた経験を持つ。そのためか医療映画を得意とし、『私の中のあなた』もカサヴェテスの監督作品だ。


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