『パッチ・アダムス』
監督:トム・シャドヤック
出演:ロビン・ウィリアムズ、モニカ・ポッター、フィリップ・シーモア・ホフマン、ボブ・ガントン
公開年:1998年
時間:115分
販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

 今でこそ「病院の中では快適に過ごしたい」と患者は普通に要望し、病院側も様々な工夫をする時代になったが、今から30年ほど前までは、日本の病院は暗くて臭くて汚いのが当たり前だった。かつ、医師は権高で横柄。病院は「笑い」や「ユーモア」から最も隔絶した場所であり、患者は医師のことを、恐がりながら「先生様」と呼びさえしていた。

 日本だけでなく米国も全く同じ状況だったことを『パッチ・アダムス』を観ると分かる。それもそんな昔の話ではない。モデルとなったハンター・キャンベル・アダムスは1945年生まれの現役バリバリの精神科医だ。病院や診療所に道化師が赴き、患者を笑わせるクリニッククラウン(clown=道化師)活動の先駆者である。

 物語は、悩める青年ハンター・アダムス(ロビン・ウィリアムズ)が自殺願望をなくすために自ら精神病院に入院したことから始まる。何を治療されるわけでもなく、閉じ込められたりおびえたりする患者たち。しかし少しでもジョークを飛ばすと、普通の人と同じように笑う。何か楽しいことをしたいと思った彼は、同室の入院患者の悩みを解決できたことに自信を持ち、医師になることを決意する。そんな彼に富豪で“天才病”の患者アーサー(ハロルド・グールド)は「パッチ(傷をなおす)」というニックネームをつける。

 2年後、バージニア大学医学部に入学したパッチは、3年生になるまでは患者と触れ合ってはいけないという校則を破り同級生トルーマン(ダニエル・ロンドン)と病院に潜入する。医者は患者と同じ目線に立ってはいけないという教えを無視し、笑いの療法で患者たちの心をつかんでいくパッチを、ベテラン看護師たちも理解を示し、病院の人気者になっていく。学部長のウォルコット(ボブ・ガントン)は放校処分にしようとするが、学長に救われる。大学医学部という旧態依然とした組織の中、信念を貫き続ける姿は、特に医師にはぐっとくるものがあるだろう。

 美しいが冷淡だった同級生カリン(モニカ・ポッター)もいつしか心を開き、大富豪のアーサーの出資で無料で医療を受けられる病院を共同で設立する。しかしある患者がカリンを殺し、自殺するという事件が起き、自信を失ったパッチは診療をやめて病院も閉じる決心をするが…。

 笑ったり、喜んだりすることが患者の免疫力を高め、病気の回復にも好影響を及ぼすことは、今や医療界の常識だ。日本でも、ホスピタルクラウンやクリニッククラウンが数多く活躍中で、子どもだけでなく、成人患者の心の支えにもなっている。そのルーツについて学べるという意味でも、価値ある医療映画の一本といえる。

 監督のトム・シャドヤックはプロデューサーも兼ねている。主人公のパッチをロビン・ウィリアムスにこだわり設定年齢までも変えている。実際のパッチ・アダムスより優しさや、人当たりのよさでは上をいっている―との評もある。ちなみに、DVDの特典映像にはパッチ・アダムス本人が登場している。こちらも必見。

column
実在のパッチ・アダムスは1945年生まれ。64年ジョージ・ワシントン大学医学部入学、67年ヴァージニア医科大学入学、71年同大卒業。その後、無料の医療機関を設立し診療に携わる。現在も様々な活動を行っており、詳細はhttp://www.patchadams.org/で。


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