『ロレンツォのオイル 命の詩』
監督:ジョージ・ミラー
出演:ニック・ノルティ、スーザン・サランドン、ピーター・ユスティノフ、ザック・オマリー・グリーンバーグ
公開年:1992年
時間:129分
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

 わが子が不治の病と診断されたら、それも自分の遺伝子が原因だと言われたら、あなたはどうするだろうか? 『ロレンツォのオイル』はそんな難病を患った少年の両親が、医学的な知識が全くなかったにもかかわらず、自力で治療法を探し求める物語で、実話を映画化したものである。

 アフリカのコモロ共和国で幼少時代を過ごし、この国の青年オモウリ(マドゥーカ・ステディ)から宝物の木の剣をもらった少年ロレンツォ(ザック・オマリー・グリーンバーグ)は、銀行員の父オーグスト・オドーネ(ニック・ノルティ)の転勤で、母ミケーラ(スーザン・サランドン)と共にワシントンDCへ引っ越した。

 3カ月後、学校での奇行が目立ち始め家でも暴れてしまうロレンツォをオドーネ夫妻はワシントン小児病院に連れて行く。そこで副腎白質ジストロフィーALD)という遺伝性の難病であると告知される。ALDは生まれつき体内の脂肪酸を分解する酵素を持っていないため、脳に極長鎖脂肪酸を蓄積、これがミエリンを溶かし神経機能を失わせる。母親の遺伝子から息子にのみもたらされる病気であることを知らされミケーラはショックを受ける。2人は食事療法を受けるためニコライス教授(ピーター・ユスティノフ)を頼るが効果はなく、免疫抑制剤による治療も効果は上がらない。ALD患者家族の会に出席した夫妻は親たちの無力な姿に失望し、自分たちで治療法を見つける決意を固め、医学図書館通いを始める。

 ある日ミケーラはネズミを使った論文から治療の可能性を見いだす。ニコライス教授の協力のもと、自力で開催した初の国際シンポジウムでオリーブ油から抽出されるオレイン酸に効果がある可能性が出てきた。投与すると、確かにある程度の改善が見られたが効果は一時的なもので、発作は日に日に激しくなっていった。

 脂肪酸について探索を重ねた結果、菜種油の一成分エルカ酸を投与しようと考える。オーグストは純粋なエルカ酸抽出のため、ロンドンの老学者サタビー博士の協力を得る。意識がないロレンツォにコモロ共和国からオモウリ青年を呼び寄せ、最後の希望としてエルカ酸の投与を始めて3カ月、彼の脂肪酸は初めて正常値を示した。回復は目覚ましく、まばたきで意思表示し始め自力で指も動かせるようにもなる。夫妻が研究を始めてわずか28カ月後のことだった。

 オドーネ夫妻が発見したALD治療薬は少年の名前にちなんで実際に「ロレンツォのオイル」と名付けられている。炭素数22のエルカ酸と18のオレイン酸の1対4混合物で、これを与えることで、有害な極長鎖脂肪酸の合成にブレーキをかけるというのが、このオイルの作用機序だ。

 医薬品の開発には時間とお金がかかる。患者数が少ない難病の場合、利益が上がらないため研究者も製薬企業も開発に手を出さない場合がある。オードネ夫妻のように、素人が薬剤を開発するというのはまさに奇跡といえるだろう。なお、実在のロレンツォは30歳まで生き延び、2008年、誤嚥性肺炎で亡くなっている。

column
治療薬「ロレンツォのオイル」には映画公開後も様々な毀誉褒貶があった。映画公開の翌年1993年には「ロレンツォのオイルは無効」との論文が発表されている。しかしその後も研究が進み、ALD発症予防効果があるとする論文が2005年に発表された。


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