『感染列島』
監督:瀬々敬久 出演:妻夫木聡、檀れい、国仲涼子、池脇千鶴、カンニング竹山、佐藤浩市、藤竜也 公開年:2009年 時間:138分 発売元:TBS/ 東宝

 日本は海に囲まれて、いわば離れ小島のような存在だから、かつて歴史上で世界的な流行をした感染症も、外からの災いであるという受け止め方をしていた。毎年騒がれている鳥インフルエンザにしても、パンデミック2009H1N1にしても、あるいはHIV、ペスト、コレラもそうであった。しかし、もしそれが日本で起こったら?。そういう疑問に答えた映画が『感染列島』だ。

 東京都いずみ野市民病院に、発熱と激しい咳をする男性が診察を受けにきた。そばに妻(池脇千鶴)が付き添っている。インフルエンザの結果が陰性と出たため、救急医の松岡剛(妻夫木聡)は2〜3日安静にしているようにと告げる。しかし翌日、夫は激しい咳と痙攣、吐血・下血を起こし死亡。妻も発病する。

 同じ時、いずみ野市の養鶏場で鳥インフルエンザが発生、大量の廃棄処分となる。このことが、謎の感染症の原因とみなされ、養鶏場は激しい糾弾を受け始め、畜産大学教授・仁志稔(藤竜也)が原因究明に駆けつける。

 いずみ野市民病院では医療従事者に院内感染が出始め、タミフルの服用が義務付けられる。救急医療隊で陣頭に立っていた安藤一馬(佐藤浩市)も家族の目の前で死ぬ。徐々に謎の感染症は広まり、政府は対応に追われる。

 いずみ野市民病院にWHOメディカルオフィサーの小林栄子(檀れい)がこの病気のウイルスを封じ込めるために送り込まれてきた。彼女はかつて松岡の恋人であったが、松岡の制止を振り切ってロンドンの大学で感染症を学んでいた。反発する病院関係者と厚生労働省。

 タミフルが効かず、感染は拡大し、病院はさながら野戦病院の様相を呈し始める。ここにきて、これはインフルエンザではないのではないか、生物テロではないかとの噂が流れ始める。

 発生から2週間、謎の感染症は日本中に広まり非常事態宣言が発令。いずみ野市は封鎖され、市民病院もこの病気以外の受け付けをやめ、医療関係者も専従となる。

 最初の患者の妻は回復し退院するが、何かを隠している様子がうかがえる。松岡と栄子は自宅に赴き、彼女の父親で東南アジアのアボン国で医師として働く立花脩二(嶋田久作)が一時帰国した際、この病を持ち込んだと確信した。

 正直、映画としてはかなりずさんな印象だ。登場人物たちが医学的にあまりに無防備で行き当たりばったりに見える。しかし医療映画という側面から見た場合、実際に日本でこのような原因不明の感染力が強い病気が発生したら似たような事態になるのではないかとも思う。

 2009H1N1のパンデミック時の日本の対応も決して褒められたものではなかったし、口蹄疫が発生した宮崎でも行政の対応は混乱した。当座、対症療法でしかしのげないとしたら、最前線の医療現場は、どのように統率されていくのだろうか。予防・治療体制の構築のみならず、原因究明なども同時に進めていかなければならない。日本の行政や医療機関は果たして的確に対応できるのか。

 過去には、世界中を混乱に陥れ、航空業界や旅行業界に大打撃を与えたSARS(重症急性呼吸器症候群)を覚えておられるだろうか。『史上最悪のウイルス』(文藝春秋)に詳しいが、中国広東省の深圳に密集する野生動物を食する野味料理店で働く出稼ぎ労働者の一人が風邪に似た奇妙な病気にかかったことが始まりだった。著者はアジア版タイム誌の編集長で、自らの足を使って取材したため、治療チーム、ウイルス学者、WHOとのかかわりや、世界蔓延の一歩手前で征圧に成功するまでの経緯が、非常にわかりやすく描かれている。

 この本を読めば、『感染列島』のストーリーが決して絵空事でないことが分かる。毎年のように騒がれるインフルエンザだけが脅威なのではない。今まで誰も診たことがない感染症を初めて診断するのは、あなたかもしれない。

column
感染爆発がテーマの米国映画に『アウトブレイク』(OUTBREAK、1995年)がある。アフリカから持ち込まれた猿を感染源として新種のウイルスがアメリカの小さな町を襲う話。エボラ出血熱流行時に封切られ話題となった。『感染列島』が今一つと感じた人は是非。


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