筑波大病院総合臨床教育センター・総合診療科教授 前野 哲博氏●まえの てつひろ氏 1991年筑波大卒。川崎医大病院総合診療部、筑波メディカルセンター病院総合診療科などを経て、2004 年より現職。日本プライマリ・ケア連合学会理事。(2012年3月現在)

─ダイレクトなタイトルですね。
【前野】外来診療の役割には色々ありますが、最も基本的で大事なのが、帰してはいけない外来患者を帰さないことです。外来で即座に診断が付かない患者は多いですが、帰していいのかどうかの“判断”は必ずしなくてはならない。そのミニマムの責務を果たすために、どうすればいいかを解説したのがこの本です。

 実は、そういった外来診療の基本をきちんと教えている医療機関は非常に少ない。多くの病院では、若手医師が病棟や当直の業務にある程度慣れたら、「じゃあ外来ブース任せるからやってみて」と、前線に出す。もちろんこうした実地のトレーニングも重要ですが、外来診療の能力を身に付けるにはそれだけでは不十分です。

 どういった情報を集めて、鑑別診断リストをどう挙げて、緊急性や重篤性のある疾患をどうやって優先的に絞り込んでいけばいいか。そういった思考プロセスをきちんと教えてもらわなければ、本当の外来診療能力を身に付けるまでに多くの時間と患者を犠牲にしかねません。

帰してはいけない外来患者
前野哲博・松村真司編集 3990円(税込み)、医学書院 ISBN978-4-260-01494-6 A5判、215ページ

 この思考プロセスは臨床推論と呼ばれるものですが、いわば職人の技でありセンスによる部分が大きく、それをうまく言語化した本はあまり見当たりません。なので本書ではそれにあえて取り組んでみました。臨床推論の専門用語は使わず、突発持続型や増悪傾向の症状は危ない、逆に反復性の症状は基本的に安心、などとメッセージが伝わりやすいように配慮しました。

─ 主訴ごとの解説が見開き2ページにまとまっていて簡潔です。
【前野】そこを最も重要視しました。教科書のようにたくさんの情報が書いてあっても、一度に覚えられるものではないですから。胸痛ならここ、全身倦怠感ならここというように、見逃してはならない部分と、この場合は安心という部分を両方書いています。厳密に言えば明確に割り切れない部分もあるのですが、思考プロセスの主軸をこれで確立し、実臨床で様々な応用例を経験してもらえばいいと思います。

 後期研修医を主な対象読者としていますが、普段外来診療をしておられるベテランの先生方にも参考になるのではないでしょうか。(聞き手:野村 和博)


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