SB ライフサイエンス代表 中田敏博氏●なかだ としひろ氏 1968年栃木県生まれ。千葉大医学部卒。慶大病院などに勤務後、MIT 経営大学院でMBA を取得。2001年にヘルスケア領域に特化したベンチャーファンドのSBライフサイエンスを創業。(2011年7月現在)

─「医療鎖国」とは衝撃的です。
【中田】ヘルスケア分野のベンチャー企業に投資・経営参画する会社を米国で設立し、欧米で認可された薬剤を日本に導入する活動をしてきました。ところが、いつも行政の壁にぶつかる。既に欧米で認可されていても日本で一から臨床試験をしなければならず、導入実現までに長い年月がかかるのです。

 行政はいつも「前例がないので」と言うばかり。結果、ドラッグラグ、デバイスラグが生じ日本の医療は他国から「閉鎖」され、先進国どころかアジア諸国にも後れを取る事態に陥っています。

 薬剤導入の面だけに限りません。医師の需給策や保険制度、診療報酬改定など様々な面で誤った政策が取られています。こうした状態を作り出したのは行政や政治家、業界団体といった“既得権益者”たちです。医療に無関心で「お上」に任せ切りの国民、一方的な感情論ばかりから医療を報道してきたマスコミにも原因があります。

 専門家に任せ切るのではなく、多くの国民が医療の様々な状況に興味を抱き、不備を指摘し、政策決定に関与すべきです。そうすれば“既得権益者”の意識も変わり、先端医療の導入などを進めるようになるでしょう。 

医療鎖国 なぜ日本ではがん新薬が使えないのか
中田敏博著 809円(税込み) 文藝春秋 ISBN978-4-16-660799-0 新書判、240ページ

 国内の画期的な医療技術もしっかり育てなければいけません。日本では革新的技術が登場すると多くのメディアがたたえる一方で、その実用化については軽視され、開発費用を投資しようとする人はとても少ない。結果、革新的技術が海外に流出しています。それを防ぐために、国は国内外のベンチャーキャピタル(企業投資会社)の活用を促進すべきです。

─ 医師でありながらMBA(経営学修士)も取得されていますね。
【中田】医師の仕事はやりがいがありましたが、病院という“檻”に入れられている感がありました。米国で医療だけでなく経営も学び、複数の視点から医療を見られるようになりました。本書は、こうした複眼的な見方を大切にしてまとめたつもりです。

 医療政策に様々な視点を取り入れるため、民間の人材を官庁に多く登用し、政権が変わったら入れ替えるようにしてはどうでしょうか。政策決定の透明性も確保されるはずです。(聞き手:豊川 琢)


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