社会福祉法人老人ホーム同和園附属診療所(京都市伏見区)所長 中村仁一氏●なかむら じんいち氏 1940年長野県生まれ。66年京大卒。高雄病院院長・理事長を経て、2000年より現職。市民向けに「自分の死を考える集い」を開き、講演を行っている。(2012年7月現在)

─大反響のようですね。
【中村】2012年1月末の発行で、6月には50万部に到達したそうです。今、高齢者医療のあり方が、政策や医療提供の側面から問われていますが、一般の人たちの関心も相当高まっているという証しではないでしょうか。

─医療とかかわるな、とは?
【中村】医療を全否定しているわけではなく、やみくもに医療にすがると悲惨な結果になりますよ、ということです。回復やQOLの向上が見込めるなら当然利用すべきですが、単に死を先送りするだけなら、断った方がいい。本人の意思が関与しない治療行為は、周囲の者の自己満足にすぎません。医療はあくまで、本人がその生き方に照らして関わるべきものだと思います。

─高齢者医療を担っている医療者から批判の声はありませんか。
【中村】ありませんね。1998 年に『幸せなご臨終─「医者」の手にかかって死なない死に方(』講談社)を発刊したときは、「年寄りの命を何だと思っている」「末期と決めつけるな」などと随分たたかれましたが、今回そうした批判がないのは時代の変化でしょうね。一般読者からは「自然死を選びたい」「年寄りは具合が悪いのが正常と言われてホッとした」という声が届いています。

大往生したけりゃ 医療とかかわるな
中村仁一著 798円(税込み)幻冬舎 ISBN978-4-344-98248-2 新書判、213ページ

─これまでのご経歴は。
【中村】 京大卒業後、医局に属さず京都南病院(京都市下京区)に入職し、しばらくして高雄病院(右京区)に移りました。96年に市民向けの「自分の死を考える集い」を始め、もうすぐ200回を数えます。そこでは、今の「生」を有意義にするため死を視野に入れるよう説いてきました。高雄病院を退職後、老人ホームで数百人の高齢者を、点滴も酸素吸入も行わない「自然死」で看取りました。集いの活動と看取りの実践を踏まえて出来たのが本書です。

 今の日本人にとって、死は身近ではありません。だから死に際に慌てて、つい延命治療を選んでしまう。そうならないために本人も家族も、やり残したことのリストを作って達成しておくべきです。それらを含めた「死を意識した生き方」の作法を、具体的に紹介しました。こうした作法が広まって、患者や家族が死を受け入れる意識をするようになれば、高齢者医療は変わると思います。 (聞き手:野村和博)


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