追加インスリンで調整
 個人差があるが、補食してから低血糖の自覚症状が取れるまでに時間が掛かることがある。そのため、過剰に補食し、血糖値が上がり過ぎてしまうケースもある。中には、低血糖になったとき、ここぞとばかりに補食する人もいるという。

 こうした「過剰補食」への対応策として、インスリン治療を行っている糖尿病患者に対して黒田氏は、追加インスリンの考え方に基づいた血糖値の調整を指導している。

 例えば、血糖値が70mg/dLだった場合、それを80〜100mg/dLに戻すためには糖質5gを摂取すればよい。だが、スポーツドリンク1本を飲んでしまった場合、まずその飲料に書かれている栄養成分表に基づいて、1本に含まれる総炭水化物量を算出する。これが20gだった場合は、差の15gが過剰に摂取した糖質量ということになる。そこで、過剰な糖質の摂取に伴う血糖上昇をインスリン追加投与によって防ぐというわけだ。

 そのためには患者に対して、追加インスリン1単位で血糖値はどれくらい下がるか、言い換えれば摂取できる糖質はどの程度かを、あらかじめ教えておくことが必要となる。上の例の患者が追加インスリン1単位当たり10gの糖質を摂取可能ならば、追加投与すべきインスリン量は1.5単位と計算できる。

運転前には必ず血糖測定を
 無自覚低血糖を呈する糖尿病患者で、忘れてはならないのが自動車運転前の指導だ(表2)。近距離の移動であっても、運転前には必ず血糖測定をするように求めることが大切だ。

表2●自動車を運転する患者に対する指導のポイント

 黒田氏は、「近くに行くだけだからと、血糖値を測定しない人が多い。だが、そもそも血糖値は常に変動しているし、低血糖を自覚できていない恐れもある。だからこそ測定する必要がある」と強調する。

 血糖値が90mg/dL未満の場合、ジュースやブドウ糖錠剤などを補食する。血糖値を測定できない場合は、自覚症状の有無にかかわらず、運転前に必ずジュースを1本飲むように説明する。

 運転中に低血糖症状が現れたら、速やかに道の端など安全な場所に停車し、ジュースなど糖質を含む食品を補食する。その後、低血糖状態から回復して30分以上待ってから運転を再開するようにする。SMBGと補食は車内で常に手の届く位置に置いておくことも重要だ。

図1●HbA1cと交通事故リスクの関係
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 欧米の報告によれば、HbA1cが低い糖尿病患者ほど交通事故を起こすリスクは高まるという(図1)。HbA1cが低い人ほど、患者指導の重要度は増すわけだ。黒田氏は、「重症低血糖になった際の具体的な指導法は教科書に載っていない。患者が重症低血糖に即座に対処できるよう、分かりやすく指導することが欠かせない」と語っている。