平均血糖値はα-GI併用の有無にかかわらず有意差を認めなかったが、血糖値の日内変動幅を示す標準偏差は、α-GI併用により有意に減少した。

 「α-GIは血糖の日内変動を抑制するとともに低血糖リスク回避も期待できるので、併用薬として用いやすい」と楠氏。

 また、強化インスリン療法中の1型糖尿病患者にα-GIを12週間併用投与した検討では、HbA1cとBMIは有意に低下し、低血糖の頻度も有意に減少した(図2)。このように、α-GIは1型糖尿病患者でも食後血糖およびインクレチン分泌動態の改善が期待できるユニークな薬剤だという。

図2●1型糖尿病患者の強化インスリン療法におけるα-GIの併用効果
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SU薬の併用時は投与量に注意
 DPP-4阻害薬で効果不十分な症例に対する少量のSU薬の併用は、血糖降下作用が確実なことから、重要な選択肢の1つとなっていることは間違いない。ただし、DPP-4阻害薬とSU薬の併用については、重症低血糖などを防ぐためにSU薬の投与量を最大用量の半量以下にするようリコメンデーションが出されている。

 このように併用に際し注意すべき組み合わせなのだが、2012年に大阪府内科医会会員を対象にした糖尿病診療実態調査によると、DPP-4阻害薬を処方する際に最もよく併用されているのはSU薬(31.2%)という結果だった(村田秀穂ら 日本臨床内科医会会誌 2013; 28:570-4.)。

 「依然として、SU薬は実地医の日常診療で処方されやすい薬剤であることが明らかになった。しかし、その薬剤特性を十分に把握して適応症例を考え、その使用量は必要最低限とし、低血糖に注意する必要がある」と楠氏は注意を促している。

インスリンとインクレチン薬を併用
 2型糖尿病でも、食事・運動療法および経口糖尿病薬によっても血糖コントロールが得られない場合は、インスリン治療を行う必要がある。まず基礎インスリンから導入し、不十分な場合は追加インスリンを併用する方法が低血糖予防の面からも有用であることが示され、広く行われるようになった。

 2型糖尿病患者のインスリン療法で十分な血糖コントロールが得られなかった場合、楠氏が勧めるのはインスリンとインクレチン関連薬との併用だ。

 楠氏によると、インスリンで十分な血糖管理が得られていない患者にDPP-4阻害薬であるシタグリプチンを上乗せしたところ、併用前と比べ平均血糖値が低下し、血糖日内変動幅も減少した。グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬をインスリンに上乗せしたときも、同様の結果が得られた。

 楠氏は、「インスリン分泌が枯渇していない2型糖尿病患者であれば、インクレチン関連薬を上乗せすることで、インスリンを減量しながら血糖値が改善できるだけでなく、インスリンの欠点である低血糖と体重増加も抑制できる」と、その利点を説明する。

 現在、糖尿病の治療において血糖管理の標準的な指標であるHbA1cは、平均血糖値とはよく相関するが、低血糖の予測には有用ではない。そこで低血糖を起こさない治療を実践するためには、個々の患者に応じた治療目標の設定と正確な血糖変動の評価に加えて、それぞれの薬剤特性を踏まえた選択が求められている。