インクレチン関連薬の登場により、経口糖尿病薬の選択法が大きく変わってきた。これまで、わが国の2型糖尿病の経口薬治療においては、HbA1cの改善効果が最優先されてきた。そのため比較的インスリン分泌が保たれている患者に対しては、確実な血糖降下作用が期待できるSU薬の使用割合が最も高かった。

 しかし、SU薬は経口薬の中では低血糖の頻度が高く、体重増加も来しやすい。これに対してインクレチン関連薬は、血糖依存性のインスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制作用により、高血糖を是正する。さらに、体重増加を助長せず、単剤では低血糖を起こしにくいことが特徴だ。

 兵庫医科大学内科学糖尿病・内分泌・代謝科の楠宜樹氏は、「インクレチン関連薬の登場に伴い、SU薬が第一選択となる機会は減少してきた」と話す。

兵庫医科大学の楠宜樹氏

 糖尿病患者を診察する際、まず病態や患者背景などを把握した上で治療目標を設定し、食事・運動療法を指導する。これで十分な血糖コントロールが得られない場合は薬物治療となるが、そのとき楠氏は低血糖リスクが低い薬剤の単剤かつ少量投与から開始する。

 具体的には、インスリン抵抗性が高いと考えられる患者には、ビグアナイド薬(BG薬)、または体重増加に注意が必要だがチアゾリジン薬を選択する。一方、インスリン非依存状態だがインスリン抵抗性よりもインスリン分泌能の低下が主な病態と考えられる患者には、インスリン分泌促進系薬を選択する。その中でもSU薬ではなく、薬剤特性からDPP-4阻害薬を選択することが増えたという。

血糖の変動幅を改善するα-GI
 ただ、どのDPP-4阻害薬もその血糖降下作用はHbA1cで0.7〜1.0%程度と、SU薬に比べると作用は弱い。従ってDPP-4阻害薬単剤で効果不十分な場合には、他の経口薬の併用が必要となる。その際もBG薬やα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)など、低血糖を起こしにくい薬剤の併用を、まず考える。

 欧米で2型糖尿病治療の第一選択薬となっているBG薬は、血糖降下作用が強く体重増加を来しにくいほか、安価であるといった利点がある。

 楠氏は「最近では、第一選択薬としても併用薬としてもBG薬を選択することが増えた。しかし、BG薬は重大な副作用として乳酸アシドーシスが挙げられる。そのため、BG薬適正使用に関するリコメンデーションに従い、投与に当たっては患者の病態、とりわけ年齢や腎・肝・心肺機能を考慮に入れ、その利点・欠点を勘案した上で適切に投与する必要がある」と指摘する。

 また、楠氏はα-GIを併用することも多い。α-GIでは他剤との併用により、食後血糖に加えて血糖変動幅が改善するほか、食後のインスリン分泌も抑制される。さらにはインクレチン分泌動態の是正も期待できるためだ。

 その裏付けとなるのが、DPP-4阻害薬にα-GIを上乗せする前後で血糖の日内変動を比較するために行った、持続血糖測定(CGM)の結果だ(図1)。

図1●CGMで評価したDPP-4阻害薬とα-GIの併用効果
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