厳格な血糖管理とトレードオフの関係にある低血糖。近年、重症低血糖は心血管疾患のリスク上昇につながるなど、予後悪化因子になることが明らかになってきた。2型糖尿病を中心に重症低血糖の現状と、その回避を念頭に置いた薬物療法や患者指導のポイントを取材した。


重症低血糖を起こした2型糖尿病患者の実像が明らかになってきた。国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科の辻本哲郎氏らは、2006年1月〜12年3月に同センターに救急搬送された全ての患者5万9602例中、重症低血糖と診断された414例を対象に、全身状態や合併症、重症低血糖の原因などをまとめた。

 その中から2型糖尿病患者326例の詳細を抜き出したものが表1だ。年齢71.4歳、HbA1c 6.6%、罹病期間16年で、心血管疾患の既往歴を持つ患者が2割に上るほか、7割の患者が高血圧を合併していた。

表1●重症低血糖を発症した2型糖尿病患者の特徴(国立国際医療研究センター)
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 なお、本検討で重症低血糖とは、自力での回復が困難でブドウ糖静注などの医学的介入を要する状態と定義。来院時点で心肺停止の患者は対象から除外している。

国立国際医療研究センターの野田光彦氏

 年齢分布を見ると、加齢とともに重症低血糖を起こした患者は増加し、80〜84歳が最も多い(図1左)。同センター糖尿病研究部長の野田光彦氏は、加齢による腎機能や肝機能の低下の影響を指摘する。「それだけ薬物代謝能も低下しており、重症低血糖を起こしやすくなっている。高齢者に対して、青壮年までと同じ用量で漫然と糖尿病治療薬を処方するのは危険と言ってよいだろう」と語る。

 HbA1c値の分布を見ると、7.0%未満の患者が大半を占めていた(図1右)。つまり、重症低血糖を起こす2型糖尿病患者の多くは、目標とする血糖コントロールを達成している患者ということになる。また重症低血糖の原因を見ると、大半が糖尿病治療薬によるもので、内訳はインスリン(47.9%)とスルホニル尿素(SU)薬(39.6%)が突出していた(表1)。

図1●重症低血糖で救急搬送された2型糖尿病患者の年齢(左)とHbA1c値(右)の分布(国立国際医療研究センター)
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