米国糖尿病学会(ADA)は今期学術集会の会期中に、1型糖尿病(T1DM)に関する新しいPosition Statementとして、『Type 1 Diabetes Through the Life Span』を発表した。ADAでは毎年改訂する『Standards of Medical Care in Diabetes』など日常診療でのガイドラインに相当するPosition Statementを多く発表しているが、T1DMに特化して小児から成人まで包括的に扱ったものは初めて。

 その中では、合併症予防や成長に与える影響などを考慮して最終的には患者ごとに適切な目標を設定すべきとしながらも、治療目標として18歳未満は年齢に関係なくHbA1c7.5%未満を推奨した。これまでは、6歳未満では8.5%未満、6〜12歳8.0%未満、13〜19歳7.5%未満と、年齢に応じて段階的に設定されていた。

 段階的になっていた理由は、治療目標の厳格化に伴い重症低血糖のリスク増加は避けられず、その発生が度重なることで、小児では特に神経系や認知機能への悪影響が懸念されていたことだ。また未成年期の緩めの血糖コントロールが、成人以降に発症する長期合併症にどの程度の影響を及ぼすかも不明だった。

 だが近年、作用時間が異なるインスリンアナログ製剤が使えるようになり、プログラム可能なインスリンポンプや持続血糖測定(CGM)といった高機能のデバイスも登場した。それだけ、低血糖のリスクを増やさず厳格な血糖管理が可能になった。一方、小児期の低血糖による認知機能への影響は確認されておらず、逆に高血糖状態の持続によって短期的には中枢神経系に影響が及ぶ危険性が指摘され始めた。

 さらに同じ領域の学術団体である国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)では、未成年者に対し年齢に関係なくHbA1cで7.5%未満を推奨していた。ADAでは、このような関連学会のガイドラインとの整合性も鑑み、治療目標の変更に踏み切った。なお成人T1DM患者の治療目標は、これまでと同様にHbA1c7.0%未満となっている。

 小児から成人まで包括的なガイドラインとした狙いは、一般医や地域社会、健康保険会社などに対するT1DMの正しい知識の啓発にある。小児期の患者は小児内分泌医に管理されているが、成人後や成人発症のT1DM患者は一般医を受診することが多いという。

 だが広く普及している知識は2型糖尿病(T2DM)をベースにしたものがほとんどで、その全てがT1DMにも当てはまるわけではない。それだけに、アップデートされたT1DMの知識の普及が急務とされていた。

 本論文は、Diabetes Care誌2014年7月号(37巻2034〜2054ページ)に掲載されたほか、同誌のウェブサイトから無料でダウンロードできる。