糖尿病と肝疾患の関連が注目され始めた。2つの疾患をつなぐキーワードが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と、その中で特に問題となる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)だ。糖尿病の日常診療においても肝機能に注意して、NASH/NAFLDから肝硬変や肝癌へと進行させない管理が求められている。


大阪府済生会吹田医療福祉センターの岡上武氏

 「肝炎・肝癌治療のスペシャリストが参加する犬山シンポジウムでの集計によれば、肝癌の原因としてNAFLDの割合が急増し、この10年で2倍になった。現状の増加が続けば、10年後にはNAFLDを含む肝炎ウイルス以外の原因による肝癌が最も多くなるだろう」。

 こう警告するのは、大阪府済生会吹田医療福祉センター(大阪府吹田市)総長の岡上武氏だ。

 ウイルス性や自己免疫性の肝疾患を除外し、一定量以上の飲酒歴がないのに脂肪肝が認められれば、NAFLDと診断される。その中で肝細胞傷害(風船様変性)や線維化などが生じているのがNASHで、それらを認めないのが非アルコール性脂肪肝(NAFL)だ(図1)。

図1●脂肪肝の分類

 NAFLDが注目された理由は、同疾患が肥満や糖尿病、高血圧などを基盤に発症し「メタボリック症候群の肝での表現型」と見なされている上、NASHの約3分の1は進行性で、肝硬変や肝癌の母地となるため。ウイルス由来の肝癌制圧の道筋が見えてきた現在、NAFLD由来肝癌の増加が問題となっている。

 日本糖尿病学会と日本癌学会による「糖尿病と癌に関する委員会報告」でも、糖尿病患者の肝癌のリスクは非糖尿病患者に比べ1.97倍と高率だった。

肝機能異常者の8割がNAFLD
 まず必要なことは、糖尿病患者における肝疾患の実態の把握だ。表1は、日本人の糖尿病患者5642例を対象に、肝機能や肝炎ウイルスマーカー、肝線維化の指標などを調べたもの。岡上氏が主任研究者となった「非アルコール性脂肪性肝疾患の病態解明と診断法・治療法の開発に関する研究」班、いわゆるNASH/NAFLD研究班がまとめた。

表1●糖尿病患者5642例(男性3238例、女性2404例)の患者背景(NASH/NAFLD研究班)
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