高血圧には多くの発症因子が関与するが、主要な因子として交感神経活性の亢進が注目されている。交感神経の抑制は薬剤によって可能だが、近年、薬物治療に抵抗性を示す高血圧に対する新しい治療法である腎除神経術(腎デナベーション)への関心が高まっている。これはカテーテルを用いて腎交感神経を焼灼させる治療法だ。最近、非盲検法による臨床試験で腎除神経術の有効性を示す成績が報告された。それを踏まえ、同治療法の有効性、安全性を検討するための無作為化比較試験SYMPLICITY HTN-3が実施された。米国 Brigham and Women's HospitalのDeepak L. Bhatt氏が研究グループを代表し、その結果を発表した。

 この試験には米国の88施設が参加した。対象は年齢が18〜80歳、利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を最大用量で併用しても外来での収縮期血圧(SBP)が160mmHg未満に低下せず、難治性高血圧と診断された患者とした。ただし、自由行動下血圧測定(ABPM)による24時間SBP平均値が135mmHg未満、腎機能低下(推算糸球体濾過量が45 mL/分/1.73m2未満)、主腎動脈の直径が4mm未満か治療可能な部分が20mm未満、腎動脈病変などが認められる症例は除外した。

 これらの条件を満たした535例を、腎除神経術(RD)群または腎血管造影のみを行うシャム対照(SC)群に2対1の比率で無作為に割り付けた。

 患者背景をRD群(364例)とSC群(171例)で比較すると、年齢(57.9歳、56.2歳)、男性比率(59.1%、64.3%)、外来SBP(180mmHg、180mmHg)、24時間SBP平均値(159mmHg、160mmHg)、BMI(34.2、33.9)、白人比率(73.0%、69.6%)だけでなく、腎不全や睡眠時無呼吸症候群といった既往歴、降圧薬の使用率などでも、両群間に有意差はなかった。

 なお、本試験は治療者のみが割り付けを知る単盲検法により実施したが、エンドポイントの判定は治療内容を知らない医師が担当した。

 有効性の主要評価項目は試験開始後6カ月間の外来SBPの変化量とその群間差に設定。その結果、RD群における6カ月間の変化量は−14.1mmHgで、有意に下がっていた(P<0.001)。SC群は−11.7mmHgで、同じく有意に低下しており(P<0.001)、両群間の差は−2.39mmHg(95%信頼区間[CI] −6.89〜2.12)で、有意な差は認められなかった(P=0.26)。

 副次評価項目の1つであるABPMによる24時間SBPの変化量は、RD群が−6.8mmHg、SC群が-4.8mmHgと、いずれもベースラインに比べ有意に低下していた(ともにP<0.001)。しかし、両群間の差は−1.96mmHg(95%CI −4.97〜1.06)と、有意な差はなかった(P=0.98)。

 安全性については、主要有害事象(MAE)の頻度を過去のデータに基づく客観的評価基準(OPC)と比べることで判定。今回のMAEは全死亡、末期腎不全、臓器障害を伴う塞栓症、血管障害、高血圧性クリーゼ、6カ月以内に新規発症した腎動脈狭窄症とした。

 MAEの発生率はRD群が1.4%、SC群が0.6%と、いずれもOPCの基準値である9.8%に比べ有意に低かった(P<0.001)。また、両群のMAE発生率に有意差は認められなかった(P=0.67)。

 以上の結果をBhatt氏は、「無作為化と盲検化という厳格な方法で腎除神経術の難治性高血圧に対する有用性を検討した結果、安全性は認められたが、有効性を証明することはできなかった」とまとめた。

 今回の試験結果が既報の成績と一致しなかったことについて同氏は、無作為化盲検法で行われた本試験のデータを重視すべきとの考えを示したが、問題点として、腎除神経術が適正に実施されたか否かを見極める臨床的評価法がないことなどを指摘。その上で、「今後、腎除神経術の方法を再検討する必要がある」と締めくくった。