クローン病に対する初めてのTNFα阻害薬として、インフリキシマブが承認されたのは2002年。その後、クローン病の治療戦略は激変し、患者のQOLも目覚ましく向上した。潰瘍性大腸炎も09年以降、免疫抑制薬のタクロリムスやインフリキシマブなどが承認され、治療の選択肢が広がった。炎症性腸疾患の治療は今、どのようなステージを迎えているのか。最新事情をまとめた。


 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)は、免疫の過剰反応により腸管粘膜に炎症や潰瘍が生じる慢性疾患だ。依然として原因は不明で、先進国で多く発症し、日本でも患者数は年々増加している。現在、クローン病患者は約3万6000人、潰瘍性大腸炎患者は既に14万人を超えている(2012年度特定疾患医療受給者証交付数による)。

 根本的治療薬がない中で、難渋してきた治療を大きく変えたのがTNFα阻害薬などの生物学的製剤だった。日本では2002年、クローン病に対して初めてのTNFα阻害薬インフリキシマブが承認され、約8割の患者に有効という劇的な効果が、患者のQOLを著しく向上させた。その後、10年にはインフリキシマブに続き、ヒト型のTNFα阻害薬のアダリムマブが承認された。

 一方、潰瘍性大腸炎の治療でも、09年に免疫抑制薬のタクロリムス、10年にインフリキシマブ、そして13年にはアダリムマブが承認され、遅ればせながら難治例に対する治療の選択肢が出そろった。

◎潰瘍性大腸炎
難治例への切り札
インフリキシマブとタクロリムスの使い分けが鍵

 こうした流れを受け、2月に福島で開催された第10回日本消化管学会では、寛解導入後の長期予後がまだ明らかでない潰瘍性大腸炎難治例に対するタクロリムスやインフリキシマブの治療成績の発表が数多く見られた。

 東北大学消化器内科の遠藤克哉氏らは、同大病院の難治性潰瘍性大腸炎患者におけるタクロリムスとインフリキシマブの寛解導入率および導入後の維持成績を報告した。図1は、治療8週後の寛解導入率の成績を示したものだ。インフリキシマブ投与群の平均DAI(Disease Activity Index)スコアは7.4から3.1へ低下し、寛解導入率は46.8%だった。タクロリムス投与群では、平均DAIスコアは8.3から3.3に低下し、寛解導入率は50.0%だった。

図1●インフリキシマブとタクロリムスの短期治療成績(遠藤氏による)
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 「これまで治療に難渋し手術になることが多かった潰瘍性大腸炎の難治例で、寛解導入率が約50%というのは十分な手応えだ」と遠藤氏。そこで今回は、寛解導入後の長期の維持成績について検討を行った。

 インフリキシマブ投与群(40人)は、0、3、6週に3回投与した後、8週ごとに投与する維持療法に移行した。タクロリムス投与群(36人)は、保険適用となる3カ月間投与を継続。9割の患者は免疫調整薬のアザチオプリン/メルカプトプリン(AZA/6MP)を併用した。3カ月でタクロリムスを中止し、以降はAZA/6MPを中心とした寛解維持療法を行った。

 患者背景は、インフリキシマブ投与群の約6割はステロイド依存性の患者で、既にAZA/6MPの投与歴があった。一方、タクロリムス投与群の7割はステロイド抵抗性の患者で、AZA/6MPナイーブ例が9割を占めた。