狭帯域光観察(NBI)を併用した拡大内視鏡検査(M-NBI)は、胃癌の全ての肉眼型が対象となる胃スクリーニング検査として良好な診断能を有していることが確認された。7施設20人の内視鏡医が参加した多施設前向き研究の結果で、石川県立中央病院消化器内科の土山寿志氏らが発表した(主任研究者:福岡大学筑紫病院の八尾建史氏)。

 検討対象は、スクリーニング目的で上部消化管内視鏡検査を受けた20歳以上の患者。自覚症状の有無は問わないが、胃癌のスクリーニング検査としての診断能を評価するため、胃癌もしくは胃腺腫と診断され精査や治療目的で内視鏡検査を行う患者は除外した。

 まず白色光で非拡大観察を行い、肉眼型を問わず癌が疑われた病変を標的病変とした。標的病変がない場合はこれで検査終了とし、標的病変が存在した場合はM-NBIに移行して最大倍率で観察、その所見による診断体系として提唱されているVS classification systemに基づき、癌・非癌を判断した。

 評価項目は、全ての標的病変で生検を実施し、その病理診断結果を基準としたM-NBIの診断能とした。

 1094人に内視鏡検査を行い、310人から373の標的病変が発見された。病理診断の結果は癌が20病変、非癌が351病変、診断困難が2病変だった。癌と非癌の間で、標的病変の存在部位、肉眼型、色調に有意差はなかったが、平均長径は癌の方が大きかった(18.8mm対7.3mm)。生検診断困難例を除く371病変でのM-NBIの正診率は96.1%、感度60.0%、特異度98.0%となった。

 本研究では、所見が明瞭で内視鏡医が確信を持って診断できた病変を「高確信度」、それ以外を「低確信度」に層別化した解析も行った。「高確信度」の178病変に限ると、正診率98.1%、感度85.7%、特異度99.4%に上昇した。

 しかし、対象が癌であるだけに偽陰性による見落としは防ぐ必要がある。今回、M-NBIで癌と診断できなかった病変が1病変あった。前庭部前壁に存在した3mm大の褪色調陥凹面病変で、病理診断では粘膜表層に癌細胞の露出がなく、粘膜中層に限局した印環細胞癌だった。内視鏡検査時は、表層の胃炎を観察していたと考えられた。

 早期の印環細胞癌のように、表面の色調は褪色調で粘膜中層に限局した未分化型癌は、M-NBIでは所見を認めにくいとされている。そこで、色調が発赤調または同色調の病変に限定して診断能を算出すると、M-NBIで高確信度の病変であれば感度、陰性的中率ともに100%となった。これらから研究グループは、図1のようなスクリーニング検査時のストラテジーを提案した。

図1●M-NBIによる胃スクリーニング検査時のストラテジー案
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 土山氏は「早期の未分化型癌の限界と確信度を踏まえた判断を行えば、全ての肉眼型が対象になる胃スクリーニング検査としてM-NBIは有用であることが、多施設前向き研究で証明された。発赤調または同色調の病変を、M-NBIにより高確信度で診断できれば、癌・非癌の判断のための生検は不要と考えられる。それによる医療経済的なメリットも大きい」と話す。