食道粘膜に縦走する細かいひだ(ピンストライプパターン、以下PSP)という内視鏡所見が、比較的初期の食道アカラシアを診断するよい手掛かりになりそうだ。長崎大学病院消化器内科の南ひとみ氏らが報告した。

 検討対象は、2010年8月〜13年10月に同病院で内視鏡検査を行った、未治療の食道アカラシア患者56例。南氏らは、内視鏡検査時の(1)食道内腔の拡張、(2)食物残渣や液体の貯留、(3)食道粘膜の白色化・肥厚(白苔)、(4)食道胃接合部の機能的狭窄、(5)食道の異常収縮波、(6)PSP─などの所見について、陽性率や複数の内視鏡医の所見一致率を調べた。

 (1)〜(5)は、食道アカラシアの取り扱い規約にもある代表的な所見だ。一方、(6)のPSPは南氏が新たに見いだした所見で、粘膜表層に縦走する細かいひだを指す。インジコカルミンを散布するとひだの溝に色素がたまるため、より明瞭に観察できる(図1)。このような所見がなぜ生じるか、機序はまだ不明だ。

図1●比較的初期の食道アカラシアに見られるピンストライプパターン所見(提供:南氏)

 各所見の陽性率は、食道内腔の拡張が41.1%、食物残渣や液体の貯留が41.1%、食道粘膜の白色化・肥厚が16.1%、食道胃接合部の機能的狭窄が94.6%、食道の異常収縮波が43.9%だった。最も分かりやすいと考えられる食物残渣の陽性率が4割だった一方、PSPは66.0%と高率に認められた。

 4人の内視鏡医における所見一致率(κ)を見たところ、最も高率だった食物残渣でも0.6861にとどまり、白苔、異常収縮波がどちらも0.2797、食道内腔の拡張、食道胃接合部の機能的狭窄が0.0285と、客観性に乏しかった。これに対してPSPは0.6098と、比較的良好な所見一致率を示した。

 食道アカラシア以外の疾患では、PSP様の所見は観察されないという。本疾患に対する低侵襲治療である内視鏡的食道筋層切開術(POEM)を施行した症例では、全例で3〜6カ月後にPSPの減弱ないし消失が認められた。そこでPSPは、食物の通過障害と関連がある所見と考えられた。

 多量の食物残渣や高度な食道内腔の拡張といった典型的な所見があれば、食道アカラシアの診断はそれほど難しくない。だが食道拡張が軽度で食物残渣も見られないような比較的初期の症例を、内視鏡所見のみで診断することは難しい。今回の検討では、病悩期間が10年以内だった35例中26例(74.3%)でPSP陽性だったほか、典型的所見である食物残渣を認めなかった32例中20例(62.5%)で、PSPが陽性となった。

 本疾患は一般に病悩期間が長い疾患とされるが、未治療期間が長期化すると発癌リスクも上昇する。また低侵襲な根治療法であるPOEMの普及に従い、早期診断の意義も高まってきた。

 「嚥下困難や嘔吐などを訴えた患者に対する内視鏡検査でPSPを認めた場合、本疾患を念頭に置き、食道X線造影や食道内圧測定検査を考慮してほしい」と南氏は話している。