表2●新ガイドライン導入前後での胃ESD後出血率(中川氏による)
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 後出血の発生率は3.7%(1527例中57例)で、うち55例では内視鏡的に止血できたが、カテーテルによる止血術(IVR)が必要だったケースが1例(新ガイドライン導入後、抗血栓薬非服用者)、外科手術を要したケースが1例(導入前、低用量アスピリン休薬者)あった。15例で輸血を行っていた。

 まず全期間を対象に、後出血のリスク因子となる患者背景について多変量解析で検討したところ、切除長径6cm超(オッズ比2.91)と抗血栓薬の服用(同2.68)が有意な因子となった。

 次に、新ガイドライン導入前後での患者背景を比較したところ、導入後(12年8月以降の303例)では導入前(12年7月までの1224例)に比べ、平均年齢が高く(72.0歳対70.2歳)、抗血栓薬服用率が高率だった(29.7%対20.4%)。切除長径や深達度、病変の部位などに、導入前後で有意差は見られなかった。

 ESD時の抗血栓薬の取り扱いについては、休薬率が導入前の91.2%から導入後は47.8%に減少する一方、継続率は1.2%から34.4%へ、ヘパリン置換率も7.6%から17.8%へと増加した。

 このように新ガイドライン導入後は抗血栓薬を休薬しないでESDを施行した症例が増加していたが、後出血率は導入前が3.8%、導入後が3.6%で、有意な変動はなかった。さらに抗血栓薬服用者における後出血率は、導入前7.6%に対して導入後4.4%と、かえって低下する傾向にあった(表2)。

 ESDに伴う血栓塞栓症の発症は、新ガイドライン導入前にシロスタゾールを休薬した症例で1例、脳梗塞を起こしたケースがあったが、新ガイドライン導入後は1例もなかった。

 これらの結果から中川氏は、「新ガイドライン導入後は、抗血栓薬継続下もしくはヘパリン置換下での胃ESDが増えていた。しかし、後出血率は有意な変動を示しておらず、血栓塞栓症の発症は導入後1例もなかった。単施設かつ限られた例数での検討だが、胃ESDの後出血という観点からは、新ガイドラインの妥当性が示された」と評価する。

 現在、日本消化器内視鏡学会が全国の指導施設を対象に、抗血栓薬服用者の消化器内視鏡に伴う偶発症の実態調査を行っている。その結果が出れば、新ガイドラインの安全性はより明確になるだろう。

全例で翌日に確認内視鏡を実施

 新ガイドラインに備え新たに始めたた対策は特にないとのことだが、ESD前に必ず抗血栓薬の処方医と連絡をとり、休薬可能かどうかの判断を確認しているほか、全例でESD施行翌日に確認内視鏡検査を行っているそうだ。

 ただ、ガイドライン導入後に後出血を起こした抗血栓薬服用者の4例は、全てESD中も抗血栓薬を継続していた症例だった。「抗血栓薬を継続すれば、それだけ胃ESD後出血のリスクは高くなると推察される。抗血栓薬を継続して胃ESDを施行する場合は、後出血を念頭に置いて、通常よりもより慎重な手技と経過観察が必要だ」と中川氏は指摘している。