近年、抗血栓薬を服用している患者に、出血リスクが高い消化器内視鏡を行う機会が増えている。一方で内視鏡時の抗血栓薬の扱いに関する新ガイドラインでは、血栓塞栓症の予防重視の観点から、抗血栓薬の休薬範囲をより狭めた。実臨床で新ガイドラインは安全に運用されているか、検証が始まっている。


 高齢化の進行によって、動脈硬化性疾患や心房細動、弁膜症などのため抗血栓薬を投与される患者が増加している。それに伴い、抗血栓薬服用者に対し内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)といった出血リスクの高い消化器内視鏡を行う機会も増えている。広島市立広島市民病院では、早期胃癌の治療目的でESDを施行した患者の抗血栓薬服用率が年々上昇し、2013年では3割に達した。それだけ、出血と血栓塞栓症のリスクを上手に制御することが要求される症例が増えているわけだ。

 このような状況を踏まえ12年7月、日本消化器内視鏡学会は日本循環器学会など関連する5学会と合同で、『抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン』(以下、新ガイドライン)を発表した。従来のガイドラインは、血栓塞栓症のリスクを考慮せず、抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものだった。これに対して新ガイドラインは、抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮したものになった。

 新ガイドラインから、ESDなど出血リスクが高い手技を行う際の抗血栓薬の扱いを抜粋したものが表1だ。例えば血栓塞栓症のリスクが高い患者の場合、アスピリンまたはシロスタゾールであれば、休薬しないで消化器内視鏡を行えるようになった。また表1には示していないが、内視鏡的粘膜生検の場合も、抗血栓薬の単剤投与であれば休薬せず施行してもよいとされた。

表1●出血高危険度の消化器内視鏡時における抗血栓薬への対応(新ガイドラインのステートメントより抜粋、一部改変)
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抗血栓薬の休薬率は半減

広島市立広島市民病院内視鏡内科の中川昌浩氏

 新ガイドラインの発表から1年半が経過したことから、広島市民病院内視鏡内科の中川昌浩氏らは、胃ESD施行後の出血(後出血)の頻度を新ガイドライン導入前後で比較した。対象は01年6月〜13年12月に早期胃癌でESDを施行した1254症例1637病変。今回の検討では後出血を評価項目としたので、切除後の潰瘍面の数(1527例)で検討した。全期間における抗血栓薬服用率は22.3%(1527例中340例)だった。

 なお、後出血の定義は、(1)吐下血によって緊急内視鏡を要した場合、(2)内視鏡再検時に出血を認め、ヘモグロビン値が2gdL/以上低下した場合─のいずれかとした。