一方、便を出すのに苦労している、残便感があるというのであれば、便排出障害が疑われる。ただし、排便が3〜4日に1回となると、便中の水分量が減り硬便となることで排便困難になるケースは少なくない。そのときは、ブリストル便性状スケールを用いて、便の硬さを確認することが重要となる(表1)。タイプ3か、それより硬い便がうまく排出できない場合は、便が硬いために排便困難や残便感を訴えている可能性がある。

表1●ブリストル便性状スケール
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 それに対し、排便はほぼ毎日あり、さらに硬さもタイプ4か、それより緩いけれども便を出すのに苦労している、残便感があるという場合は、便排出障害型とほぼ間違いなく判断できる。

 ただし、排便回数が少なければ大腸通過遅延型と必ずしもいえない点に注意が要る。大腸が便を運ぶスピードが遅いわけではなく、単に運ぶものがない、すなわち食物繊維の摂取量が極めて少ないために排便回数が減っているだけのケースもあるからだ。

強い刺激性下剤は後で使う

 このように、大腸通過遅延型か便排出障害型かを見極め、診療アルゴリズムを参考に治療を進めていくことになる(図4)。もっとも、治療を始める前に癌や二次性便秘の患者を除外する必要がある。「50歳以上で過去3年以内に大腸内視鏡検査を受けていない場合は、必ず受けてもらう」と味村氏は語る。

図4●慢性便秘症診療のアルゴリズム(味村氏による)
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 便秘の診療に当たってはまず、排便困難や残便感を訴えて、軟便でも排便が困難な患者の場合は、便排出障害型である可能性が高いので、排便造影検査などを実施できる専門施設へ紹介する。一方、硬便で排便が困難な場合は、大腸通過遅延型の可能性がある。

 大腸通過遅延型である、もしくはそれが疑われる場合は食物繊維摂取量を確認し、不足している場合は食事指導を行う。長年続けてきた食生活を変えるのは容易ではないため、ポリカルボフィル(商品名コロネル、ポリフルほか)やカルメロース(バルコーゼほか)のように便の量を増やす薬剤の処方も検討する。効果不十分なときや食物繊維摂取量に問題がなければ、酸化マグネシウムを用いる。酸化マグネシウムは体にほとんど吸収されずに便の浸透圧を上げるので、大腸に水分を取られないように作用する。便は軟らかくなると速く移動するようになるので、軟便化すると同時に排便回数が増える。ただし、腎機能低下例や高マグネシウム血症例には使用できない。

 それでも効果不十分であれば、ジオクチルソジウムスルホサクシネート・カサンスラノール(ビーマス、ベンコール)、ルビプロストン(アミティーザ)、ラクツロース(小児のみ保険適応あり:モニラック、ピアーレ、リフォロース)を追加し、これらを適宜組み合わせる。カサンスラノールだけは軽い刺激性下剤だが、それ以外はすべて非刺激性下剤で、「大腸通過遅延型であれば、これらの薬剤で多くの患者はコントロールできる」と味村氏は語る。

 上記の複数の薬剤でも効果が十分でなければ、便がなかった日のレスキューとして、就寝前に頓服する刺激性下剤のセンノシド(プルゼニドほか)やピコスルファート(ラキソベロンほか)などを追加処方する。これらの治療が奏効しない場合は、専門施設に紹介することが勧められる。

 便秘診療に関して味村氏は、「排便回数や便性は客観的に測定できず、いわば自己申告に頼っている上、患者が口にしにくい内容であるので、排便日誌に記録してもらうのも1つの手だ」と語る。また、「治療効果に乏しい薬剤を漫然と投与せず、治療内容の変更を試みるべきだ。それでも効かなければ、専門施設に紹介してほしい」とアドバイスする。