便秘の原因は様々で病態に応じた治療が求められるものの、便秘診療を専門に手掛ける医療機関や専門医は数少ない。だが一般医であっても、患者が困っている症状の原因が排便回数の減少か排便時の障害かを判別できれば、治療を進めやすくなる。問診の仕方から診断、治療までの流れとコツをまとめた。


指扇病院の味村俊樹氏

 「便秘は症候群であるため、単一の治療法では対応できないが、基本的な病態を理解しタイプごとに対応すれば、治療はそれほど難しくない」と、指扇病院(さいたま市西区)排便機能センター長の味村俊樹氏は語る。

 厚生労働省の2010年国民生活基礎調査によれば、便秘の有症率は男性2.5%、女性5.1%で、1998年の1.9%、4.7%に比べ増えている。食生活の欧米化やストレス増などがその要因とみられる。味村氏は「幼い頃から食物繊維を適量摂取し、大腸に適切な刺激を与えることが重要ではないか」と指摘する。

 年齢層別に見ると、有症率は年齢が高くなるほど上昇し、特に高齢者になると急増する(図1)。その理由として、腹筋力の低下により腹圧が下がり排便しにくくなること、大腸の蠕動運動能の低下に伴い便の運搬力が下がること、骨盤底筋の協調運動能が低下してくること─などが挙げられる。

図1●年齢・男女別に見た便秘の有症率
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 10歳代から50歳代くらいまでの有症率は女性の方が3〜6倍程度多く、女性ホルモンの影響と考えられている。妊婦で便秘が増えるのは、子宮を収縮させないように女性ホルモンをより多く分泌するようになることが一因だ。子宮や大腸はともに平滑筋からできているため、大腸にも作用し、蠕動運動能が低下すると考えられている。実際、閉経後の年齢になると、男女差は急速に縮まってくる。

症状をきちんと聞き出す

 便秘を病態に基づいて分類すると、「大腸通過遅延型と便排出障害型の大きく2つに分けられる」と味村氏は解説する(図2)。大腸通過遅延型は排便回数が週3回未満に減少するタイプの便秘だ。30歳代前半までの女性はこのタイプが大半で、腹部膨満や腹痛などを訴えることが多い。一方、便排出障害型は排便行為そのものが困難になるタイプの便秘で、高齢になるとこの割合が高まってくる。軟便であっても排便が困難であり、過度の怒責や残便感、頻回便、排便時の肛門・会陰部の不快感が主な特徴だ。

図2●便秘の分類と主な特徴・症状(味村氏による)
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 原因として、大腸通過遅延の場合は加齢、薬剤、精神・心理的な問題などが、便排出障害の場合は腹筋・骨盤底筋群の筋力低下、骨盤底筋協調運動障害、直腸知覚低下、直腸収縮力低下などが挙げられる(図3)。

図3●便秘の主な原因(味村氏による)
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 診断の基本は、病歴聴取と症状の評価、身体所見だが、「便秘と判断する症状は患者によって異なるので、それをしっかり聞き出すことが最初のポイントだ」と味村氏は説明する。下剤を服用していないときの排便が3〜4日に1回なければ、排便回数が少ないといえる。さらに、排便回数は少ないものの排便時に苦労や問題がなければ、大腸通過遅延型と判断できる。