関節リウマチの疼痛治療

 関節リウマチの治療目標は先にも述べたように炎症の抑制、寛解の導入とされる。しかし、現実的には関節リウマチの鍵となる治療対象は実は痛みであるかもしれない。例えば、PROという考え方ではDAS 28という複合指標の中でもとりわけ患者全般評価、いわゆるVAS(patient global estimate)が重視される。これがPain VASと相関があることは古くから知られており、機能評価指標であるHAQとも関連を持つ。

 これらの事実は、疼痛という存在が患者の治療に対する満足度や機能に関わる度合いの大きいことを示している。患者視点の関節リウマチ治療では疼痛対策は重要である。しかし、現実的には関節リウマチ治療における疼痛治療に関する臨床研究は非常に少なく、これがこの治療を非常に曖昧なものとしている。

 基本的には、炎症性疾患という分類から抗炎症作用のあるNSAIDsが第一選択薬として用いられることになる(参考文献5)。しかし、先にも述べたように、いわゆる炎症性関節疾患の患者には慢性疼痛症状を示す症例の存在が強く示唆される。とはいえ、慢性疼痛治療薬、例えば強オピオイド、弱オピオイド、抗うつ薬の有効性に関する論文はNSAIDs併用を含めても非常に少ない。このような条件ではメタアナリシスを行っても科学的な結論を求めることができないという現実がある(参考文献6)。

 NSAIDsに関しては非選択的および選択的COX-2阻害薬が関節リウマチの疼痛治療においても強固なエビデンスを構築している。メタアナリシスの結果、当初懸念されたメトトレキサート(MTX)との併用における安全性も確認されている。NSAIDsの長期使用における安全性と有効性の検討では結論を導くに至る報告例が少なく、結論が出せない。上部消化管障害、腎障害、心臓血管障害などの副作用が報告されており、使用には注意が必要である。過去に行われたわが国の患者調査でも、長期服薬に伴い上部消化管障害が多発している可能性が指摘されている。

 各種ガイドラインにあるように選択的COX-2阻害薬の使用、さらには上部消化管障害抑制効果のある薬剤との併用が望ましい。アセトアミノフェンに関しては、それを推奨するには十分な数のランダム化比較試験(RCT)が存在しない。オピオイドに関しても同じことが当てはまる。さらに、これら2剤はともに短期間の研究結果のみで、長期にわたる安全性、有効性が確認されていない5)。安全面を考慮しつつNSAIDsを中心に疼痛治療を組み立てていくことが堅実な診療態度と思われる。

おわりに

 関節リウマチは本来炎症性疾患であるために、炎症による侵害性疼痛刺激を主体に理解されがちであるが、神経因性疼痛の存在は機序的に十分に考えられる。また、中枢神経系での疼痛閾値低下や気分障害などの変化についても、病態から考えて十分に予想される。事実、関節リウマチにおいては一部、慢性疼痛症状を伴う患者が存在する。しかし、その一方で疼痛対策に関わる臨床的検討の積み重ねは乏しく、確固たるエビデンスに欠けている。安全性を考慮したNSAIDs選択が必要と思われる。一方で、慢性疼痛という理解が必要な症例の存在にも配慮するべきである。

[参考文献]
1)Walsh DA, McWilliams DF. Pain in rheumatoid arthritis. Curr Pain Headache Rep. 2012; 16: 509-17. doi: 10.1007/s11916-012- 0303-x.
2)Sokka T, Kautiainen H, Pincus T, Verstappen SM, Aggarwal A,Alten R, Andersone D, Badsha H, Baecklund E, Belmonte M, Craig-Muller J, da Mota LM, Dimic A, Fathi NA, Ferraccioli G, Fukuda W,Geher P, Gogus F, Hajjaj-Hassouni N, Hamoud H, Haugeberg G, Henrohn D, Horslev-Petersen K, Ionescu R, Karateew D, Kuuse R, Laurindo IM, Lazovskis J, Luukkainen R, Mofti A, Murphy E, Nakajima A, Oyoo O, Pandya SC, Pohl C, Predeteanu D, Rexhepi M, Rexhepi S, Sharma B, Shono E, Sibilia J, Sierakowski S, Skopouli FN, Stropuviene S, Toloza S, Valter I, Woolf A, Yamanaka H. Work disability remains a major problem in rheumatoid arthritis in the 2000s: data from 32 countries in the QUEST-RA study. Arthritis Res Ther. 2010; 12: R42.
3)Hallert E, Husberg M, Bernfort L. The incidence of permanent work disability in patients with rheumatoid arthritis in Sweden 1990-2010: before and after introduction of biologic agents. Rheumatology (Oxford). 2012; 51: 338-46.
4)Barthel C, Yeremenko N, Jacobs R, Schmidt RE, Bernateck M,Zeidler H, Tak PP, Baeten D, Rihl M. Nerve growth factor and receptor expression in rheumatoid arthritis and spondyloarthritis. Arthritis Res Ther. 2009; 11: R82. doi: 10.1186/ar2716. Epub 2009 Jun 2.
5)Colebatch AN, Marks JL, van der Heijde DM, Edwards CJ. Safety of nonsteroidal antiinflammatory drugs and/or paracetamol in people receiving methotrexate for inflammatory arthritis: a Cochrane systematic review. J Rheumatol Suppl. 2012; 90: 62-73. doi: 10.3899/ jrheum.120345.
6)Ramiro S, Radner H, van der Heijde DM, Buchbinder R, Aletaha D, Landewe RB. Combination therapy for pain management in inflammatory arthritis: a Cochrane systematic review. J Rheumatol Suppl. 2012; 90: 47-55. doi: 10.3899/jrheum.120342. Review