重要な推奨について

 22項目の推奨の詳細を表2に示すが、重要なものについて以下に紹介する。

1)OAの至適管理には、非薬物療法と薬物療法の併用が必要である。SORは96%(JOA94%)と高く、臨床上も当然と考えられるが、ランダム化比較試験(RCT)でエビデンスが示されているわけではない。LoEはIVである。

5)膝OA患者には、定期的な有酸素運動、筋力強化訓練および関節可動域訓練を実施し、かつこれらの継続を奨励する。SORは、96%(JOA94%)と高い。LoEはIaで十分なエビデンスもある。有酸素運動については、low impactとされており、激しいエアロビクスが推奨されているわけではない。また、筋力強化については大腿四頭筋の家庭での訓練を想定している。

6)体重過多の膝OA患者には、減量し、体重をより低く維持することを奨励する。SORは96%(JOA96%)と高い。LoEはIaで多くのRCTにより証明されている。疼痛に対するESは0.36とやや効果が低いが、身体機能についてのESは0.69と高い。5%以上の減量、または1週当たり0.24%の減量により有意に改善されるとしている。

9)膝OA患者には、履物について適切な助言を与えること。膝OA患者では足底板により疼痛を緩和し、歩行運動の改善が得られる。膝関節内顆のOAを有する患者の一部においては、外側楔状足底板が症状緩和に有効である。SORは77%(JOA81%)である。LoEは、履物についてはIVで、足底板についてはIaとなっている。足底板の使用によりWOMACの疼痛、こわばり、身体機能のスコアの改善は必ずしも認められていないが、足底板装着群でNSAIDsの使用量が減少し、遵守状況がより向上したことから、臨床効果があると判定された。

12)症候性の膝OA患者ではNSAIDsを最小有効用量で使用すべきであるが、長期投与は可能な限り回避する。消化管障害リスクの高い患者では選択的COX-2阻害薬または非選択的NSAIDsとともに消化管保護のためプロトンポンプ阻害薬もしくはミソプロストールの併用投与を考慮する。ただし、CVリスク因子のある患者では、非選択的薬剤か選択的COX-2阻害薬かを問わず、NSAIDsは注意して使用する。SORは93%(JOA92%)と高い。

15)ヒアルロン酸IA注射は膝OA患者において有用な場合がある。副腎皮質ステロイドIA注射に比較して、その作用発現は遅いが、症状緩和作用は長く持続することが特徴である。SORは64%(JOA87%)である。この推奨については、原文とJOAメンバーの推奨度に最も大きな違いが出た。日本でのヒアルロン酸IA注射の普及度や実感される効果から生じたものであると思われるが、米国ではNSAIDs無効な進行症例に対して適応が認められているなどの対象症例の違いも大きいと思われる。

18)非薬物療法と薬物療法の併用によって十分な疼痛緩和と機能改善が得られない膝OA患者の場合は、人工関節置換手術を考慮する。保存療法を行っているにもかかわらず健康関連QOLの低下を伴う重篤な症状や機能制限を有する患者に対しては、関節置換術が有効かつ費用対効果の高い手段である。SORは96%(JOA94%)である。TKAに対するRCTによる評価は行われていないためLoEはIIIとなるが、評価された全ての研究で、疼痛と身体機能の実質的改善が得られている。また、現状の薬物療法より費用対効果が高いことも示されている。

21)膝OAにおける関節洗浄および関節鏡視下デブリドマンの効果は意見が分かれている。いくつかの研究で短期的な症状緩和が示されているが、他の研究では症状緩和はプラセボ効果に起因する可能性があることが示されている。SORは60%(JOA75%)である。この手術手技には色々なものが含まれているが、膝OA患者180例を無作為に関節洗浄または関節鏡視下デブリドマンと皮膚切開を伴う模擬手術の2群に割り付けたRCTで、いずれの群にも有意な変化が出なかった報告からこのような見解が示されている。

(*クリックすると拡大表示します)

おわりに

 OARSIのガイドラインは、2010年にpart III(参考文献2)が発表され、エフェクトサイズなどが更新された。しかし、推奨の文章は変更されていない。日本国内においても、2011年、アセトアミノフェンにOAの適応が追加され、最大使用量4000mgまで使用できるようになった。また、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠およびブプレノルフィン貼付剤も認可された。OAに関するガイドラインの内容は、今後も大きく変遷していく可能性が高いと思われ、今後の動向に注目しておく必要がある。

[参考文献]
1)Zhang W, Moskowitz RW, Nuki G, et al. OARSI recommendations for the management of hip and knee osteoarthritis, part II: OARSI evidence-based, expert consensus guidelines. Osteoarthritis Cartilage 2008; 16: 137-62.
2)Zhang W, Nuki G, Moskowitz RW, et al. OARSI recommendations for the management of hip and knee osteoarthritis: part III: Changes in evidence following systematic cumulative update of research published through January 2009. Osteoarthritis Cartilage 2010: 18: 476-99.