CQ8 腰痛の治療に安静は必要か
●安静は必ずしも有効な治療法とはいえない。急性腰痛に対して痛みに応じた活動性維持は、ベッド上安静よりも疼痛を軽減し、機能を回復させるのに有効である。(Grade D)
●職業性腰痛に対しても、痛みに応じた活動性維持は、より早い痛みの改善につながり、休業期間の短縮とその後の再発予防にも効果的である。(Grade D)

 安静は、従来、腰痛に対する治療として広く行われてきた。しかし、現在ではその効果は低いとする報告が多い。少なくとも、医療者側から、腰痛患者に対して安静を強制することは望ましくない。むしろ、痛みに応じた活動性維持が大切である。

CQ9 腰痛に薬物療法は有効か
●腰痛に対して薬物療法は有用である。(Grade A)
●第一選択薬は急性・慢性腰痛ともに以下の薬剤を推奨する。
 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(Grade A)
 アセトアミノフェン(Grade A)
●第二選択薬は急性腰痛に対して以下の薬剤を推奨する。
 筋弛緩薬(Grade I)
●第二選択薬は慢性腰痛に対して以下の薬剤を推奨する。
 抗不安薬(Grade A)
 抗うつ薬(Grade B)
 筋弛緩薬(Grade I)
 オピオイド(Grade A)

 ガイドラインは「NSAIDsは現在日本で腰痛に対して最も使用されている薬剤であり、急性・慢性いずれの腰痛にも有効であることが示されている」としており、NSAIDsは腰痛の薬物治療の基本といえる。また、「COX-2選択的阻害薬は一般的にNSAIDsと同等の鎮痛効果があり、上部消化管症状などの副作用が少ない。特に胃潰瘍既往患者や長期の内服が予期される患者などでは、非選択的NSAIDsでなくCOX-2選択的阻害薬の処方が望ましい」としている。

 アセトアミノフェンは、欧米では安全性の高い鎮痛薬として広く用いられている。わが国でも最近、1日総量の限度が4000mgに引き上げられ、使用が拡大している。鎮痛補助薬として中枢性筋弛緩薬を使用するが、眠気やふらつきなどの副作用に注意が必要である。

 慢性腰痛に対する第二選択薬として、抗不安薬、抗うつ薬、筋弛緩薬、オピオイドが挙げられている。ガイドラインでは「弱オピオイドはアセトアミノフェンやNSAIDsで治療に難渋する重篤な急性・慢性腰痛に有効である高いエビデンスがある。また、日本でも強オピオイドが貼付剤として処方可能となった。しかし、長期投与による有害事象や乱用・依存の問題があるため、慎重に適応を選び、定期的な評価を欠かさずに長期投与にならないよう努めていく必要がある」としている。

CQ11 腰痛に運動療法は有効か
●急性腰痛(4週未満)には効果がない。(Grade B)
●亜急性腰痛(4週〜3カ月)に対する効果は限定的である。(Grade C)
●慢性腰痛(3カ月以上)に対する有効性には高いエビデンスがある。(Grade A)
●運動の種類によって効果の差は認められない。(Grade B)
●至適な運動量、頻度、期間については不明である。(Grade I)

 ガイドラインでは、「十分なデータがないために、腰痛に対する最適な運動の種類、頻度、強度、期間を明らかにすることはできない。しかし、腰痛、特に慢性腰痛に対する運動療法は、単独でも効果が期待でき、かつ認知行動療法などと組み合わせて行うことでさらなる効果が期待される」と記載しており、有効な保存的治療として運動療法を強く推奨している。

CQ17 腰痛は予防可能か、可能であるならば有効な予防法は
●運動療法は腰痛の発症予防に有効である。(Grade B)
●コルセットの腰痛予防効果に関しては、一致した見解がない。(Grade I)
●認知行動療法は、腰痛が慢性化し身体障害の発生や病欠が長期間に及ぶのを予防するために有効である。(Grade B)
●職業性腰痛では、腰痛発症後も活動性の維持や仕事内容の変更などでなるべく早く復職することにより、腰痛の遷延や身体障害の発生が予防され、病休の長期化を防ぐ。(Grade A)
●職業性腰痛では、心的要因が大きいハイリスク群に対する腰痛発症後早期の対処が、腰痛の慢性化や身体障害の発生を防ぐ。(Grade B)

 これらの記載をまとめると、腰痛予防に有効なのは運動療法、認知行動療法、活動性の維持、仕事内容の変更による早期の復職、心的要因への早期の対処などである。日常診療ではこれらを念頭に、個々の腰痛患者に応じ、適切に指導、アドバイスを行うことが望ましい。

おわりに

 本ガイドラインは、系統的な文献検索により、現時点での腰痛に関する知識を簡潔にまとめて、EBMにのっとった適切な情報提供を目的に作成されたものである。17のCQについて、日常診療に役立つ要約および解説が記載されている。ぜひ、全文を一読されることをお勧めする。

[参考文献]
1)日本整形外科学会、日本腰痛学会監修:腰痛診療ガイドライン2012 南江堂、2012年