腰痛とは1つの疾患単位ではなく、症状の名称である。腰痛は日常診療でよく見られる代表的な症状の1つであり、その診療に精通しておくことは整形外科医の責務といってもよい。2012年に作成された日本整形外科学会・日本腰痛学会監修の「腰痛診療ガイドライン」のポイントを紹介するので、日々の診療の一助としてもらいたい。


はじめに

 2012年に日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による「腰痛診療ガイドライン2012」(参考文献1)(以下、ガイドライン)が発行された。これは、腰痛診療ガイドライン策定委員会委員長を務めた福島県立医科大学会津医療センター準備室整形外科教授の白土修氏ほか、多くの人々の努力によりまとめられたものである。本稿では、ガイドラインの記載内容のうち、診断、治療、予防に関する主なクリニカルクエスチョン(以下、CQ)と、それに対する要約を紹介し解説する。なお、推奨Gradeは日本整形外科学会の統一基準により表1に示す5段階とされている。

CQ3 腰痛は生活習慣と関係があるか
●運動不足は腰痛発症の危険因子である。(Grade C)
●喫煙は腰痛発症の危険因子である。(Grade C)
●Body Mass Index(BMI)と腰痛の間には有意な相関はない。(Grade C)

 ガイドラインでは「運動不足が腰痛発症の危険因子である」とし、運動習慣の重要性を強調している。また、「喫煙は、複数のコホート研究より腰痛発症の危険因子の1つであることが示唆されている」としている。これらは、腰痛患者の生活習慣に関する指導において参考となる。一方、「肥満に関しては、Body Mass Index(BMI)と腰痛には有意な相関はないとする論文が多い」としているが、過度な肥満による健康障害や運動不足については十分な指導が必要である。

CQ6 腰痛患者が初診した場合に必要とされる診断の手順は
●注意深い問診と身体検査により、red flags(危険信号)を示し、腫瘍、炎症、骨折などの重篤な脊椎疾患が疑われる腰痛、神経症状を伴う腰痛、非特異的腰痛をトリアージする。(Grade A)
●腰痛患者に対して画像検査を全例に行うことは必ずしも必要でない。(Grade A)
●危険信号が認められる腰痛、神経症状を伴う腰痛、または保存的治療にもかかわらず腰痛が軽快しない場合には、画像検査を推奨する。(Grade A)
●神経症状がある持続性の腰痛に対しては、MRIでの評価が推奨される。(Grade B)

 ガイドラインでは、腰痛患者が初診した際のred flags (危険信号)(表2)の有無の重要性が強調されている。すなわち、危険信号がある場合には、画像検査や血液検査などにて精査し、原疾患の特定を進める必要がある。図1に腰痛の診断手順のまとめを示す。