ロコモティブシンドロームは、運動器の健康の重要性を広く啓発するために日本整形外科学会が提唱した概念である。「ロコモ度テスト」は「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3種からなり、高齢者だけでなく壮年や若年成人にとっても、運動機能の低下に気づくきっかけになることが期待されている。


超高齢社会と増え続ける要介護認定者

 2013年9月に総務省により発表されたわが国の高齢者人口は3186万人であり、高齢化率は25.0%となった。ちょうど4人に1人が高齢者ということになる。高齢化率が21%を超えた状態は超高齢社会と呼ばれ、わが国は2007年から世界に先駆けて超高齢社会に突入している。ちなみに、アジア他国の高齢化率は、韓国が11.4%、マレーシアが4.7%であり、日本の突出ぶりがうかがえる。今後も高齢化率は上昇し、団塊の世代が75歳になる2025年前後には30%、2055年には40%になると試算されている(参考文献1)。

 高齢化とともに要介護者も増え続け、要支援・要介護認定者数は現在570万人とされている(参考文献2)。また、要支援・要介護の認定要因は、転倒・骨折、関節疾患、脊椎疾患といった運動器障害を合わせると23.1%であり、脳卒中や認知症より多い割合になっている(参考文献3)。従って、運動器を健やかに保つこと、すなわち運動機能の維持と運動器疾患の予防・改善は、高齢化がますます進行するわが国における喫緊かつ重要な課題である。

ロコモティブシンドロームの最近の流れ

 ロコモティブシンドロームは、こうした超高齢社会において運動器の健康の大切さを広く啓発し、国民に積極的に運動することを促す目的として、日本整形外科学会(日整会)が提唱した概念である。最も高齢化が進むわが国だからこその発想といえる。2009年にロコモの自己チェックツールである「ロコモーションチェック(以下、ロコチェック)」、予防・改善のための運動である「ロコモーショントレーニング」が発表され、2010年には日整会のロコモ普及を目的とした下部組織であるロコモチャレンジ!推進協議会が発足し、徐々に一般にも浸透してきた。2013年4月からは厚生労働省の「健康日本21(第2次)」の目標にロコモの認知度向上が含まれた。日整会は、2013年6月に新たな「ロコモパンフレット2013年度版」を「ロコモ度テスト」とともに発表した。

【ロコチェックとロコモ度テスト】
 前述のロコチェックは、運動機能に関する以下の7項目の質問のうち1つでも該当項目があるとロコモの可能性があるとするチェックリストである。

(1)片脚立ちで靴下がはけない
(2)家のなかでつまずいたり滑ったりする
(3)階段を上るのに手すりが必要である
(4)横断歩道を青信号で渡りきれない
(5)15分くらい続けて歩けない
(6)2kg程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)を持ち帰るのが困難である
(7)家のやや重い仕事(掃除機がけや布団の上げ下ろし)が困難である

 ロコチェックは、高齢者の自立度や転倒などに関わる評価法でよく使われている項目の中から選ばれていることもあり、運動機能との関連性が高い。さらに該当項目数が増えると自立度低下の重症度が増すという報告もあり、簡素であるにもかかわらず極めて有用なツールである。ただし、主に高齢者を対象とした項目であるため、若年期から壮年期には使いづらい上に、1つでも該当項目があればロコモの可能性があるという基準のため、努力による改善が感知しにくいことが短所として挙げられる。また、運動機能を直接評価するチェック方法も望まれていた。

 「ロコモ度テスト」は、上述のロコチェックを補うために創案された判定ツールで、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3種からなる。それぞれ、20歳代から70歳代までの約800人を対象とした調査で算出した各年代の標準値が得られており、年代標準値に達しない場合は将来ロコモの心配があるとされる。ロコモ度テストは、運動機能評価が導入されたことと年代標準値が示されたことにより、高齢者だけでなく、壮年者や若年成人にとっても、運動機能の低下に気づくきっかけになることが期待される。

 以下に、それぞれのテストの内容と意義の概略を説明する。

【立ち上がりテスト】
 下肢筋力を評価することを目的として、10〜40cmのうち、どの高さの台から両脚または片脚で立ち上がれるかを調べるテストである(図1)(参考文献4)。膝伸展筋力を体重で除したWBI(weight bearing index:体重支持指数)と関連が深く、歩行に必要な膝伸展筋力は立ち上がりテストで両脚20cm、WBIで0.45に相当し、片脚40cmはWBI0.6に相当するとされている。性別、年代別の標準値を表1に示す。例えば、男性も女性も年齢が40歳代から60歳代の人は片脚で40cmから立ち上がることが年代標準とされている。

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