医師主導型臨床研究を企画し、治療効果検証するA-TOP研究会

 だが、他剤と直接比較を行った臨床試験は多くなく、複数の臨床試験結果の単純比較も難しい。日本骨粗鬆症学会の下部組織である骨粗鬆症至適療法(Adequate Treatment of Osteoporosis:A-TOP)研究会は医師主導型の臨床研究を企画し、骨粗鬆症領域のエビデンスを充実させる目的で活動している。薬物治療に関する前向き介入研究JOINT(Japanese Osteoporosis Intervention Trial)は複数の研究が進行中だ(表3)。

 既に終了したJOINT-02研究ではビタミンD3製剤の併用により治療開始早期から椎体骨折抑制効果が認められること、複数の既存椎体骨折を有するような重症患者においてより併用効果が高いことなどが明らかになった。一方、JOINT-03研究では、ビタミンK2製剤の併用により全骨折、椎体骨折、非椎体骨折の発生頻度にいずれも有意差は認められず、効果は個人差が大きいのではないかとみられる。JOINT-04研究は患者登録中であり、JOINT-05研究は準備中である。

 2013年10月に開催された第15回日本骨粗鬆症学会において、島根大学内科学第一教授の杉本利嗣氏はJOINT-05研究の概要について紹介し、「現在、テリパラチド製剤の適応症は骨折リスクの高い骨粗鬆症とされているが、骨折の危険因子は数多く、これらの因子を複数有する患者に対するテリパラチド製剤の有効性は十分には確立されていない。患者の適格基準や目標症例登録数などはまだ検討段階にあるが、来秋には患者登録を開始したいと考えている」と述べた。

いまだ不十分な骨折患者への治療、リエゾンサービス導入で解決なるか

 萩野氏は以前、2006年1月1日から2007年12月31日の2年間、全国25施設で初回の大腿骨近位部骨折を起こした65歳以上の女性2328人を対象に骨粗鬆症診療状況を調査したところ、初回骨折前に骨粗鬆症と診断されていたのは12%にとどまっていたこと、さらに初回骨折発生から1年間の治療状況を調査したところ、骨折後の1年間に骨粗鬆症の薬物治療が1度でも行われた患者の割合は19%にとどまり、治療されていない患者が半数以上にも上ることを報告した。今回はその追跡研究として、入院中は薬物治療が行われていた患者456人の退院後の経過を明らかにした。

 退院後、薬物治療を継続していた166人と薬物治療を中断した96人の患者背景を比較したところ、より高齢で、より歩行能力が低く、退院先が自宅ではなく病院・施設であった場合に、治療が中断される割合が高かった。萩野氏は「様々な骨粗鬆症治療薬の開発が進んでいるが、患者に使用されなければ意味がない。今回の調査では再骨折リスクが高く、より治療が必要なはずの重症骨粗鬆症患者に対し、十分な骨粗鬆症治療が行われていない現状が明らかになった」と強調する。

 そこで注目されているのが、2012年に日本骨粗鬆症学会が立ち上げた「骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)」である。日本骨粗鬆症学会理事長であり、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授の太田博明氏は、OLS立ち上げの狙いについて「骨粗鬆症患者の骨折予防を目指す上でチーム医療は欠かせない。より多くのプライマリケア医やメディカルスタッフに骨粗鬆症診療に積極的に関与してもらいたいと考えている。高齢化がさらに進む中で、地域医療現場、診療所、病院の相互の密接な連携は今後ますます重要になる」と語る。

 2000年から英国では同様の「骨折リエゾンサービス(FLS)」が開始されている。脆弱性骨折の入院患者に対し、骨折治療と並行してリエゾン担当看護師による骨粗鬆症の評価を実施、長期の治療計画が立てられる。退院後もリエゾン担当看護師が診療所と連携しながら患者のフォローを続ける。骨折治療とその後の骨粗鬆症治療を円滑に継続できる病院と診療所の連携システムは、米国、カナダなど欧米各国で構築され、骨折患者の骨粗鬆症治療率の増加や再骨折予防といった成果を上げている。つまり、骨粗鬆症の治療継続率の低さは、世界共通の課題であるともいえるわけだ。

 日本骨粗鬆症学会は骨粗鬆症診療支援コーディネーターの役割を担うメディカルスタッフを「骨粗鬆症マネージャー」と呼び、2014年秋に初の資格認定試験実施を予定している。また、ガイドラインの新たな改訂に関しても、今冬から具体的な検討を始めることになっている。