ロコモ対策で本当の健康寿命の延伸を

 厚労省の「平成22年完全生命表」によれば、平均寿命は男性が79.55歳、女性が86.30歳です。近年、寿命という観点から新たな指標が注目されています。それは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を示す「健康寿命」です。2010年の厚労省「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」によれば、健康寿命は男性が70.42歳、女性が73.62歳ですので、平均寿命と健康寿命の差は、男性で約9年、女性で約13年の長期にわたります(図2)。「不老長寿」は人類の長年の夢ですが、実際に得られたのは「病長寿」や「老長寿」にすぎません。健康寿命を延ばし、平均寿命との差を縮めることが喫緊の課題であるといえます。

 成長期に運動器の健全な発達を促し、壮年期にはそのレベルを維持し、老年期には少しずつ衰えていくのは仕方がないにしても、健康寿命と平均寿命を限りなく近づけることが理想です。近年、朝礼の時間立っていられない、手を真っすぐ上に上げられないなど、学童の運動能力の著しい低下が問題視されています。成長期に運動器の能力をできるだけ高めておくことが望ましいことから、将来的には学童期からロコモ予防を開始したいところです。

 また、若い女性では過剰なダイエットが問題になっていることもあり、運動器の維持や骨粗鬆症予防という面から見て不安が残ります。

運動器に関する学会との幅広い協力を模索

──多方面との連携がますます重要になりますね。

泉田 ロコモと骨粗鬆症に関しては、2013年10月に日本整形外科学会と日本骨粗鬆症学会で初の合同シンポジウムを開催しました。定期健診への運動器健診の導入に関しては日本人間ドック学会と、栄養学的な側面からは日本栄養・食糧学会との協調が考えられます。ロコモは非常に大きな問題ですので、幅広い分野から協力を募って対策に取り組まなければなりません。

 ロコモが「健康日本21(第2次)」の目標に盛り込まれたことで、多くの地方自治体からロコモ チャレンジ!推進協議会に問い合わせが寄せられています。ロコモに関わる医師の裾野を広げていくとともに、地域での健康づくり運動を担う様々な職種の方々との連携も欠かせません。

 「健康日本21(第1次)」で目標値に認知度向上が掲載されたメタボリックシンドロームは、最終的な認知度は92.7%に上昇しましたが、日常生活での平均歩数はかえって減少してしまいました。認知度は向上したものの対策が進まなかった原因の1つに、主体となる組織が明確ではなかったことが挙げられると思います。ロコモに関しては、日本整形外科学会が主体であることを明確にし、運動器障害は対策を講じればある程度は予防可能だということを、より強く訴えていきたいと考えています。

 われわれは、自分の身体を自在に動かすことができます。その動きを担う運動器、中でも筋肉は年齢にかかわらずトレーニングに反応する鍛えがいのある器官です。自分の身体の中で、自分の意志で鍛えられる部分はさほど多くはありません。意志さえあればロコモが予防できるということは、ロコモ対策において非常に明るい一面だと思います。

 ロコモを理解しその予防に努めることは、社会の介護負担を減らすのみならず、人生の最期まで自立と尊厳を保つことにつながります。端的に言えば、ロコモの最終的な目標は健全な運動器を保持することによる健康寿命の延伸ですが、「健康寿命が幸福寿命の必要条件である」ことを最後に改めて強調しておきたいと思います。