岩本 幸英氏
九州大学整形外科教授(日本整形外科学会理事長)

 2013年に開始された国民の健康づくり運動「健康日本21(第2次)」において、日本整形外科学会がこれまで普及に努めてきたロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)の国民への認知度を、10年後に80%にまで上昇させるという数値目標が設定されました。また、運動器関連の項目としては他に「足腰に痛みのある高齢者の割合を10年後に約1割減少させること」が盛り込まれました。

 ロコモとはそもそも、「運動器の障害により既に要介護になっているか、要介護となるリスクが高い状態」を指します。手足や腰の痛みは、生活の質に影響するだけではなく、転倒や骨折のリスクとも関連しており、どちらも高齢者の自立を保つ上で重要な要素といえます。

 わが国では欧米を上回る急速な高齢化の進展に伴い、介護保険サービスを必要とする国民の数は年々増加しています。ロコモの重要性がより広く認知されれば、運動器の健康を保つことに対する国民の意識が高まり、行動変容が促されて、介護が必要な国民の割合を減少させる効果が期待されています。

 「健康日本21(第2次)」ではまた、現在約10年の開きがある「平均寿命」と自立した生活を送れる「健康寿命」との間隔の短縮も、目標に掲げられました。健康寿命の延伸を目指すには、高齢者の運動器疾患に対する適切な診断・治療に加え、より若い年齢層にロコモ予防対策を拡大していく必要があります。

 日本整形外科学会の下部組織であるロコモ チャレンジ!推進協議会では、ロコモの正しい知識と予防意識の啓発のための活動を行っている、日本整形外科学会所属の専門医を「ロコモアドバイスドクター」としてホームページで紹介しています。1000人の登録を目標としていますが、既に登録者は約800人に達しました。地方行政や関連団体と連携しながら、さらに国民に広くロコモが浸透していくよう取り組んでいくつもりです。(談)