心不全患者は入院を繰り返すと、予後が悪化していく。その一方、再入院の予防はQOLを向上させ、ADLの低下抑制が期待される。多職種によるチーム介入により、薬物療法や心臓リハビリテーション、患者教育の実施率が向上し、再入院を半減させられることが示された。


 近年、様々な職種の医療スタッフが協力してチーム医療を実践する施設が増えてきている。その1つである鳥取大学医学部附属病院の循環器内科では、多職種による包括的なチーム介入で心不全患者の再入院を減少させることに成功している。

多方面からの介入が求められる

 心不全患者の予後は、癌患者と同じくらい悪いことが知られる。一般に、増悪するごとに徐々に身体機能が低下し、やがて死に至るという経過をたどる。また、入院を繰り返す患者は予後不良であることも示されている。

 心不全の増悪による再入院の原因を調べると、医学的な要因だけでなく、塩分・水分制限や治療薬服用の不徹底、過労といった患者側の要因も挙げられる。介護サービスの利用が少ないといった社会的な要因も指摘されている。つまり、「医師による医学的な介入だけでは再入院を予防することは難しいと考えられ、多方面からの介入が不可欠だ」と、同科の病棟医長を務める衣笠良治氏は指摘する(図1)。

 同科では心不全クリニカルパスを導入しているが、再入院予防が重要との認識から、「心不全クリニカルパス(再入院予防プログラム)」と記し、再入院予防という目標を明確に示している。これにより、医師、薬剤師、看護師、理学療法士、栄養士などの職種を問わず共通の目的を共有できているという。クリニカルパスには、薬物・非薬物療法、心臓リハビリテーション、服薬指導、生活指導、栄養指導などが組み込まれ、「標準化することで実施率の向上に加え、個人の熱意や努力に依存することなく継続的に実施できる体制の構築を目指している」(衣笠氏)。

患者教育は再入院予防に効果的

 再入院予防プログラムの有効性を検討するため、2006年5月から2009年4月までに同科に入院した133人を通常治療群、2009年5月から2011年4月までに入院した144人を多職種介入群とし、退院から1年間追跡した。退院時の患者背景は両群間で特に差はなかった。

 その結果、β遮断薬の処方率が通常治療群51.1%から多職種介入群72.9%に、心臓リハの実施率は39.8%から84.0%に、心不全のコントロール状況の評価を目的とした退院時BNP測定の実施率は51.1%から85.4%と、いずれも有意に高まった。パンフレットを用いた生活指導、服薬指導、栄養指導の実施率も全て有意に増えていた。一方、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬の処方率は79.7%から86.1%と増加していたが、もともと高率に処方されていたこともあり有意ではなかった。