高血圧ではない正常高値血圧の段階から、心血管疾患リスクは有意に高まることが明らかになってきた。血糖高値や慢性腎臓病といったリスク因子を同時に保有すると、リスクはさらに上昇する。減塩指導だけでなく、魚や野菜などの積極的摂取を勧めるなどの指導も肝要となる。


 「血圧値が130〜139/85〜89mmHgの正常高値血圧は、将来の高血圧予備群といえる。また、既に心血管疾患(CVD)のリスクが有意に高いことから注意が必要だ」─。国立循環器病研究センター予防健診部医長の小久保喜弘氏は強調する。

 高血圧が脳卒中やCVDの強いリスク因子であることは、以前から広く知られている。だが、正常高値のような高血圧の前段階状態も、CVDのリスク因子であることが徐々に明らかになってきた。

 そうしたエビデンスの1つが、無作為に抽出された30〜79歳の吹田市在住の一般市民を対象とした地域コホート研究である「吹田研究」だ(図1)。登録時にCVD既往歴がなく2年ごとに定期健診を受けた5494人(降圧薬服用者を含む)を対象とし血圧分類別に解析したところ、血圧値の上昇に伴いCVDリスクは高まる傾向が見られた。

 男性の場合、至適血圧群に対する正常高値血圧群のCVD発症のハザード比は2.46、I度高血圧群は2.62と、正常高値血圧の段階からCVDの発症リスクが有意に上昇することが明らかになった。一方、女性においては、正常高値血圧群のハザード比は1.54、I度高血圧群は1.35と、いずれも至適血圧群より高い傾向にあった。女性では正常高値群の方が高かった理由について小久保氏は、「閉経後に血圧は上昇するが、このコホートでは閉経前と閉経後の人が混在していたことと、白衣高血圧による誤分類があったため」と説明する。

 ある原因により疾患を発症する人の割合を示す寄与率を見ると、男性の方が女性よりCVD発症に対する血圧の寄与率は高かった。例えば、正常高値だと男性は12.2%が、女性は7.1%が、血圧が原因となってCVDを発症する。すなわち、正常高値血圧を改善すれば、上記の割合だけCVD発症者が減ることを意味する。