現在作成中の高血圧治療ガイドライン(JSH2014)では、2009年以降に発表されたわが国のエビデンスを取り入れ、日本人のエビデンスに基づくガイドラインを目指しています。透明性を重視し、実地医家の先生方に使いやすいガイドラインにすることを意識しました。

 透明性に関しては、まず利益相反(conflict of interest:COI)のある企業を全て序章に記載する予定です。また、日本医療機能評価機構から出されている「Minds診療ガイドライン作成の手引き2007」に沿って作成を進めてきました。作成過程をできるだけオープンにするとともに、執筆段階から多くの査読委員を加え、外部の方からも意見を伺ったのはその一環です。

 今回の改訂作業には、執筆委員やリエゾン委員、査読委員など150人を超える委員が携わっています。コンセンサスを形成する際には、いわゆる声の大きい委員や権威のある委員の意見に引きずられて、他の委員が発言しなくなるといった事態を避けたいと強く考えていました。一部の委員の意見があたかも多数派であるかのごとく、そのまま通るのは問題があるからです。そのため、基本的には各委員が1人で考え、その後、全体で討論し、もう一度個々人で考えていただきました。

 今年8月にはJSH2014の原案を公開し、パブリックコメントを募集しました。募集期間を前回より長く設定しましたが、その間に52のコメントを頂き、全ての質問や疑問に回答しました。10月の高血圧学会のシンポジウムでもいろんな意見が寄せられました。

 そうした過程を経て、来年4月1日にガイドラインを発刊する予定です。英語版は、『Hypertension Research』の4月号に掲載する方向で作業を進めています。さらに来年10月には、患者向けのガイドラインもぜひ発表したいと思っています。

欧米とは疾患背景が異なる

 エビデンスに基づいた記載というのは当然のことですが、全く方向性の異なるエビデンスがある場合や解釈の仕方により結果が異なってくる場合には、コンセンサスに基づいて記述するようにしました。

 糖尿病を合併した患者の降圧目標を例に挙げると、最近の傾向として、海外のガイドラインはこぞって降圧目標を緩和しています。しかし、JSH2014案では、降圧目標を引き上げることなくそのまま据え置きました。

 決してエビデンスを無視したわけではありません。日本と欧米では脳卒中と心疾患の発症比に大きな差があることを考慮した結果です。疾患背景が異なるので、脳卒中の方が多い日本では降圧目標を引き上げる必要はないとの判断です。もし、そうした違いを一切考慮しないのであれば、世界共通のガイドラインが1つあればよいことになってしまいます。

 また、後期高齢者の降圧目標については、以前から指摘されていたように、画一的に下げるとリスクが生じるケースもあることから150/90mmHg未満としました。ただし、あくまでも「未満」ですから、忍容性があって問題なく下げられる人は、これまで通り140/90mmHg未満まで緩徐に降圧していくべきです。現在、140/90mmHg未満にコントロールされている方の血圧管理を甘くしても構わないという意味ではありません。