新たなうつ病の治療法として近年注目されている、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)によるうつ病治療ガイドラインの概要が明らかになった。杏林大学精神神経科学教室講師の鬼頭伸輔氏が報告した。

 rTMSは、非侵襲的に頭蓋内に電場を誘導させることで神経を刺激する。既に欧米では、抗うつ薬治療抵抗性のうつ病に対する治療法として実用化されている。日本うつ病学会が2011年9月、デンマークMagVenture社が開発したrTMS装置(商品名PagPro)の早期承認を求める要望書を厚生労働省の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」に提出。適切な使用を目的とするガイドラインの策定を条件に、厚労省から医療ニーズの高い医療機器として認められた経緯がある。

 現在、日本うつ病学会は、厚労省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)とともに、ガイドラインの作成を進めている。鬼頭氏は、「薬事承認までにさらなる吟味が必要な段階」としながらも、ガイドラインの内容を紹介した。

 現段階では、rTMSの治療対象は抗うつ薬治療抵抗性うつ病となる予定だ。双極性障害に対する治療効果のエビデンスはないことから、双極性障害は適応外となる。治療抵抗性の定義は、米国では1種類の抗うつ薬が効かない患者、欧州では2種類の抗うつ薬が効かない患者となっているという。鬼頭氏は、「3〜4種類の抗うつ薬に抵抗性を示す患者にはrTMSも効きにくいため、2種類程度の抗うつ薬が効かない患者を対象とするのが適当だろう」と話す。

 一方rTMSには、0.1%未満ではあるものの、痙攣を生じるリスクが存在する。痙攣発生時には適切な対応が必要となるため、ガイドラインに講習会などの受講を実施の条件として盛り込む方向で検討している。

 問診による痙攣リスクの把握も重要となる。ガイドラインには問診の具体的な方法も記載される予定だ。てんかん、湿疹、頭部外傷の既往などを聞き、痙攣のリスクが高いもしくは不明な患者はrTMSの治療対象外とすることが求められそうだ。

 海外ではクリニックなどの外来でrTMSによるうつ病治療が実施されているという。鬼頭氏は、あくまで私見と断った上で、うつ病治療におけるrTMSの位置づけについて、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が効かない患者に対して、三環系抗うつ薬を処方する前段階でrTMSを試みるのがいいのではないか」と話した。

 ただし、rTMSの標準的な方法は、週5日の刺激を4週間継続することとなっている。ほぼ1カ月間毎日通院する必要があることから、治療を受けられる患者は限定されそうだ。